9: ◆q5RWMTtiKKUe
2017/06/12(月) 22:23:12.43 ID:GTk52CSjo
しかし、結局それは憧れのまま終わってしまった。
医者になるのが夢だった子どもは、大人になって医者になれたのだろうか。
将来の夢はスポーツ選手だと言った子どものうち、どれだけがその夢を叶えられたのだろうか。
10: ◆q5RWMTtiKKUe
2017/06/12(月) 22:24:30.63 ID:GTk52CSjo
この事務所でだって、当然事務員をするつもりだった。
「私がアイドルだなんて。」
今の彼女の年齢は世間一般でいうアイドルよりも、確かに少し高いだろう。
11: ◆q5RWMTtiKKUe
2017/06/12(月) 22:25:14.00 ID:GTk52CSjo
彼女は開演前に会場の近くで、プロデューサーと落ち合うことになった。
会場前の広場にはすでに大勢の人々が集まっていた。
物販列に並んでいる人たち、入場待機列に集まっている人たち、彼らを誘導するスタッフたち。
イベントごととしてはよくある光景だが、この時の彼女の目には少し違ってみえた。
12: ◆q5RWMTtiKKUe
2017/06/12(月) 22:26:00.87 ID:GTk52CSjo
「あ、お疲れさま。プロデューサー。」
少し小走りで近づいてくる男性を見つけた彼女はそう声をかけた。
彼の腕には、スーツの上からSTAFFと書かれた腕章がつけられている。
「急に呼び出してしまってすみません。どうしても、どちらか決めてしまう前に公演を見てほしくて。」
13: ◆q5RWMTtiKKUe
2017/06/12(月) 22:27:17.93 ID:GTk52CSjo
彼女はいまいちよくわからないまま彼の後ろを歩いてついていく。
彼が案内する先は公演のお客さんが列を作っている入場口とは逆向きの方向。
建物の裏側にある扉の前でふたりは立ち止まった。
「え?これって通用口じゃない。もしかして・・・」
14: ◆q5RWMTtiKKUe
2017/06/12(月) 22:28:11.69 ID:GTk52CSjo
舞台裏のスペースへと案内された彼女はなんだか落ち着かなかった。
当然それは仕方のないことだろう。
舞台袖に入る機会なんて今までなかったし、考えたこともなかったのだから。
そこでは今日の公演に出演するアイドルたちが素敵な衣装を着て準備していた。
15: ◆q5RWMTtiKKUe
2017/06/12(月) 22:29:09.86 ID:GTk52CSjo
開演を告げるはじまりのベルが鳴る。
客席から聞こえる大きな歓声は、舞台裏にいた彼女にその熱気を伝えるのに十分すぎるほどだった。
アイドルたちが一斉に暗転しているステージの上へと上がっていく。
彼女は舞台裏で、自分の心臓の鼓動が速くなるのを感じていた。
16: ◆q5RWMTtiKKUe
2017/06/12(月) 22:29:48.76 ID:GTk52CSjo
楽曲がもともと持っている色に、アイドルたちは自分たちの色を乗せていく。
歌うパートひとつ取っても楽曲は様々な色に彩られていくのだ。
ひとつひとつの色は全て違っていて、ある一つの形になっていく。
この曲も、また次の曲も。
カラフルに彩られた時間はあっという間に過ぎて行き、公演はますます盛り上がりを見せていった。
17: ◆q5RWMTtiKKUe
2017/06/12(月) 22:32:15.85 ID:GTk52CSjo
「あーっ!」
それは公演の中盤ごろだっただろうか。
彼女は突然あらわれたある少女に抱きしめられた。
18: ◆q5RWMTtiKKUe
2017/06/12(月) 22:32:57.14 ID:GTk52CSjo
「えっ!?本当に本当に24歳なんですか!?」
「本当に本当に24歳!」
髪のハネた少女がその会話を見て笑う。
19: ◆q5RWMTtiKKUe
2017/06/12(月) 22:33:57.15 ID:GTk52CSjo
「そっか〜。それじゃあまだ、アイドルになるかどうかって、決まってないんですね〜。」
髪のハネた少女に何気なくそう言われ、彼女は考え込んでしまう。
確かにそうだ。ライブに圧倒されてはいたが、もともと自分の中でどうするか決めるために来たんじゃないか。
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