1: ◆nIlbTpWdJI[saga]
2017/06/06(火) 00:00:18.76 ID:M0dxYweBo
真夜中の十二時きっかり。女子寮は完全消灯の時間をとっくに過ぎて、どの子もみんなすやすやと寝息を立てている頃だろう。
「フヒ、日付が変わった……」
シイタケくんを先頭に、私の部屋をぐるりと23種類のトモダチがぽこぽこと顔を出している。
お気に入りのキノコ型ランプが真っ暗な部屋を優しいオレンジ色に照らしている。じめじめなキノコたちもボッチにさせない優しい光だ。
優しい光を放つランプの前にぺたりと座り込む。
そして、他の部屋に聞こえないように、だけどトモダチには届くように、小さく息を吸い込んだ。
「ボッチバースデートゥーミー……♪」
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2: ◆nIlbTpWdJI[saga]
2017/06/06(火) 00:01:18.45 ID:M0dxYweBo
六月六日。今日は私の誕生日だ。
ボッチの私は、誕生日でも関係なくボッチだった。
リア充みたいなお誕生日会なんてこれっぽっちも縁がなかった。
3: ◆nIlbTpWdJI[saga]
2017/06/06(火) 00:02:20.21 ID:M0dxYweBo
キノコは私の支えでもあるし、変わるきっかけになった親友と会わせてくれた大事なトモダチだ。
スカウトだって、キノコを探してうろうろしてたときだった。
……今思うと、結構な笑い話だな。アイドルオーディションを「キノコのオークション」と間違えて行くなんて。フヒッ。
4: ◆nIlbTpWdJI[saga]
2017/06/06(火) 00:02:52.93 ID:M0dxYweBo
アイドルをやっていたら、色々なことが、ぽこぽこ生えるキノコみたいにいっぱいあった。
日陰でジメジメした誰かのために叫べるようになった。
好きなものを好きだと思いっきり歌って輝けるって知った。
5: ◆nIlbTpWdJI[saga]
2017/06/06(火) 00:03:49.20 ID:M0dxYweBo
トモダチが増えた。
6: ◆nIlbTpWdJI[saga]
2017/06/06(火) 00:04:31.62 ID:M0dxYweBo
キノコたちに支えられて、親友がいて、ユニットの仲間たちがいて……
ずっとボッチバースデーだったけど、もしかしたら、もしかして、ちゃんとハッピーバースデーってお祝いしてくれるんじゃないかな……?
キノコがいっぱいのお部屋で、お誕生日会をする。
7: ◆nIlbTpWdJI[saga]
2017/06/06(火) 00:05:53.24 ID:M0dxYweBo
――かどうかというタイミングで、ドアを激しく叩く音が聞こえた。
8: ◆nIlbTpWdJI[saga]
2017/06/06(火) 00:06:54.25 ID:M0dxYweBo
間抜けな声を出す幸子ちゃんをほっといて美玲ちゃんがむりやりフードを被せてきた。
完全に視界を奪われたまま、手を引かれてどこかへ連れてかれていく。
女子寮の廊下をぺたぺた歩く自分の足を眺めながら、幸子ちゃんと美玲ちゃんにぐいぐい引っ張られていく。
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