日野茜「文香ちゃんから別れたいと言われました」
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1:名無しNIPPER
2017/06/01(木) 12:21:24.94 ID:JJsq6z5I0
・シンデレラガールズSS
・百合注意
・ふみあかでお付き合いしてる前提の話
よろしくお願いします
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2:名無しNIPPER
2017/06/01(木) 12:22:12.97 ID:JJsq6z5I0
文香は畏まったように姿勢を正した。
文香と茜で、もう何度も来ていて常連となった茶壮。
いつものお気に入りのお茶を飲みながら談笑していた。
3:名無しNIPPER
2017/06/01(木) 12:22:56.17 ID:JJsq6z5I0
文香としては珍しく、顔を上げて真っ直ぐ相手を見つめていた。
茜もただならぬ雰囲気を感じ、居住まいを正す。
「……別れたいと、思います」
4:名無しNIPPER
2017/06/01(木) 12:23:45.07 ID:JJsq6z5I0
「ごめんなさい……茜さん。でも、私は中途半端な気持ちでいたくありません」
「大丈夫です! 私は文香ちゃんのこと、大好きです!」
「いえ……そういう、ことではなくて……」
5:名無しNIPPER
2017/06/01(木) 12:24:15.64 ID:JJsq6z5I0
茜が絶句するなんてことはあまりに珍しく、文香はその事実を前に視線の行く先を探して顔を下げ、その表情は前髪に覆われていた。
「……我が儘ですみません」
「いえ! そんなことありません! 文香ちゃんのそういうところ、大好きですから!」
6:名無しNIPPER
2017/06/01(木) 12:24:51.59 ID:JJsq6z5I0
だったら、せめて出来ることは。
「私は、この半年間、楽しかったです!」
「すみません……私は、誰かとお付き合いするということをよくわかっていなくて……」
7:名無しNIPPER
2017/06/01(木) 12:25:18.11 ID:JJsq6z5I0
冷めきったお茶を飲み干し、今を終わりにすべく、二人はゆるやかに席を立って会計へと向かった。
文香は申し訳ないと感じているのか、こちらを見ようともせず、複雑な表情をしていた。
茜は頭に霞がかかったような感覚のままレジで伝票を渡して、割り勘の分の会計を告げられてもまるで頭に入って来ず、数字が認識できない。
8:名無しNIPPER
2017/06/01(木) 12:27:06.57 ID:JJsq6z5I0
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
日が傾き始めた中、二人は大通りを駅に向かって並んで歩く。
いつもなら繋いでいた手は、人ひとりぶん空いていた。
9:名無しNIPPER
2017/06/01(木) 12:28:04.10 ID:JJsq6z5I0
いつもより茜の歩は遅く、文香の歩は速く、駅の改札口に到着した。
家への電車は逆方向なので、ここで別れたら、それで終わり。
「茜さん……本当にごめんなさい、自分一人で考えてしまって」
10:名無しNIPPER
2017/06/01(木) 12:28:39.77 ID:JJsq6z5I0
いつも握っていたはずの文香の手は、すぐそこにあるのに、世界が隔絶されたように遠い。
本当に、好きでいてくれてた?
本当に、楽しかった?
11:名無しNIPPER
2017/06/01(木) 12:29:19.35 ID:JJsq6z5I0
明確な拒絶。
文香の横顔と碧い瞳は、見たことがないほどに鋭かった。
茜は声を発することも出来なかった。
12:名無しNIPPER
2017/06/01(木) 12:30:37.68 ID:JJsq6z5I0
茜の手は宙に浮いたまま。
文香は振り返りもせず去っていった。
文香の通過した改札が、来るものを拒む壁のような、可視化された無機質な境界線のようなものに感じられた。
13:名無しNIPPER
2017/06/01(木) 12:31:13.77 ID:JJsq6z5I0
その場から離れたくなって、ふわふわとした頭で、亡霊のような足どりで電車に乗った。
走ることもできなかった。
いつの間にか家に着いていたのは、もう何度も茶壮に行って、体が勝手に覚えている証拠だった。
14:名無しNIPPER
2017/06/01(木) 12:31:58.95 ID:JJsq6z5I0
「……あああああああああっ!!!!」
言葉にならない叫びが一人きりの部屋に響く。
「ああああっ! あああああっ! あああああっ!」
15:名無しNIPPER
2017/06/01(木) 12:32:49.05 ID:JJsq6z5I0
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
走っていても、アイドルをしていても、もやもやが晴れない。
しかしながら、そこはプロである。
16:名無しNIPPER
2017/06/01(木) 12:33:19.00 ID:JJsq6z5I0
二人でいた日々の記憶を辿る。
強く残っているのは、いつもの茶壮。
ゆったりとした時の流れる場所と、華やかで優しい香りのするお茶。
17:名無しNIPPER
2017/06/01(木) 12:33:50.61 ID:JJsq6z5I0
文香と一緒にいて見えた世界は、とても素敵で、新鮮で、輝きに満ちていた。
この感情を、否定したくはなかった。
この経験を、無駄にはしたくはなかった。
18:名無しNIPPER
2017/06/01(木) 12:34:29.73 ID:JJsq6z5I0
文香の影響で様々な知識はついたつもりであったが、語彙力不足は否めず、また、気持ちを文章でアウトプットするというのは喋るのとは別の難しさがあり、最初はペンを片手にノートの前で唸っていた。
それでも、しばらくしてから茜はプロデューサーの許可の下、ブログを始めた。
当初はポジティブパッションやチアフルボンバーズでの仕事やプライベートのこと等、明るい話題が多かったが、時折独特な語彙センスで普段感じていることを文章にすることが増えてきて、いつもの明るさや瑞々しさの中に、思慮深さや人間臭さを感じさせる文章は多くのファンを感心させた。
19:名無しNIPPER
2017/06/01(木) 12:34:59.35 ID:JJsq6z5I0
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「文香ちゃん! お仕事で一緒になるのは久しぶりですね! 今日の『マッスルキャッスル』頑張りましょう!」
「はい。茜さんも、お久しぶりです。ブログが話題になっていると、お伺いしました」
20:名無しNIPPER
2017/06/01(木) 12:35:41.28 ID:JJsq6z5I0
決して、無駄ではなかった。
上手くいかなかったかもしれないけど。
二人の関係は、もう元には戻らないけど。
21:名無しNIPPER
2017/06/01(木) 12:36:35.71 ID:JJsq6z5I0
読んでいただきありがとうございました。
過去には
新田美波「ミーナミン! キャハっ☆」
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