ハルヒ「古泉くんの子どもだったらあんな放蕩息子に育ってないわよ」
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14:名無しNIPPER[saga]
2017/05/14(日) 15:43:25.83 ID:laxrmAmeo
声につられて振り返ると、
ダボッとした安っぽいTシャツに七分丈のジーンズをはいた少年が立っていた。

乱暴な口のきき方とは裏腹に、田舎で道に迷った人へ問うた返答を気長に待つような、
くりっとした黒目がちな大きな瞳に温かさを感じる。

静けさと反比例するように胸騒ぎを起こす場所。
そう、もう異空間と呼んでいいと思う。
そこでホラーそのものみたいな女を目の当たりにしているというのに、
彼は関係なく日常の中にいるような平然とした顔をしていた。

しかし少年はわたしに対して何かに気づいたように一瞬、眼差しをさらにきらめかせる。

「あれ、お前……。いや、もしかして覚醒したばかりで迷いこんじまったのか?」

意味こそ判然としないが飾り気のない口調の発する言葉にわたしを心配する響きがある。
その瞳がまるで輝く一番星のように、この世界にたった一つの家路への道しるべに思えた。

改めてよく見るとわたしよりも背が低く、声変わりもしていないから、
小学六年かせいぜい中学一年くらいだろう。
あどけない顔立ちのどこかになぜか七重を思わせる。

そう思い掛けた時、ずっと向こうまで吹っ飛んだはずのさっきの女が、
逆方向の、つまり少年の後ろのほうからぴた、ぴた、と近づいてくるのが見えた。
明らかに今度は少年を怨念を持った目で睨めつけながら、ゆっくりと。

サキ「危な」

わたしが口を開くあいだに、女の姿が瞬間的に少年の間近まで移動し、
まさに仕留めようと見下ろしたとき、
女は突如天から降ってきた巨大なこぶしに、地響きを立てて潰された。

わたしは轟音と震動に硬直したが、
少年は自分の後ろ、そしてわたしの後ろのことのどちらも全く気に留めない様子だった。

わたしの背後にまたいつの間にか現れた、
物凄く大きな何かの全体像がこの子の視界には入っているはずなのに。

少年の背後のそれは、半透明だけれど、確かに巨大な腕だった。
地面に突き立ったモニュメントのような柱がクレーンのように、
ゆっくり引き上げられていくのをたどって空を見上げると、
それは青白くほのかに光る体の巨人の肩から延びていたから。
何十メートルにもそびえ立つ巨体に漆黒の空が透けて見える。

わたしは何度めか分からないが、改めて絶句した。
夢でわたしが振り返ったときに見たモノが、今目の前にあるから。
恐怖と共に、何故かこの巨人と対峙しなければならないという、ありえない義務感もある。

上を向いたまま瞬きも忘れていたわたしに淡々とした少年の声が聞こえた。

「大丈夫。敵じゃない」


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