【デレマス】「先輩プロデューサーが過労で倒れた」
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23: ◆Z5wk4/jklI[saga]
2017/05/01(月) 23:10:04.45 ID:z+wGLY660
「やりましょうっ、比奈さん!」
割って入ったのは茜だった。茜は勢いよく立ち上がる。
「アイドル! 私、比奈さんといっしょにアイドルやりたいんですっ!」
俺も比奈も、呆気に取られて茜を見ていた。
やがて、比奈は困ったように笑う。
「いやー、アタシなんて……茜ちゃんにそう言ってもらえるのはうれしいっスけど、アタシは茜ちゃんみたいにかわいくないですし、キラキラもして――」
「キラキラしてますっ!」
茜は比奈の言葉を遮るように言った。
茜は机の上の原稿を指さす。
「比奈さんのマンガ、すっごく面白かったです! すいませんっ、なんて言ったらいいかわかりませんっ! だけど、キラキラしてました! あんなマンガを描ける人が、キラキラしてないわけがないじゃないですかっ!」
茜はそう言い切った。
比奈は驚いたように目を丸くしている。ほんの少し、頬があかく染まっていた。
「あ、はは」比奈は我に返り、恥ずかしそうに頭を掻いた。「マンガ褒めてもらえるのはめちゃくちゃうれしいっスけど……でも、アイドルとはやっぱ、別物っすよ、ね、プロデューサーさん」
比奈は俺のほうを見る。
「確かに、一緒ではない、けれど――あのマンガは、本当に、面白かった、掛け値なしに。あれはきっと、空っぽな人間には、ぜったいに描けない。比奈さん、あんたの心のなかにはきっと、なにかがあるんだ。人を惹きつける、なにかが」
それは本心だった。言って俺ははっとする。
先輩は、この『なにか』を、比奈に見出していたっていうことか。
俺に言われて、比奈はふたたび目を見開いて、さっきよりも顔を赤くする。
「ね、だから!」茜はずいと比奈に詰め寄る。「アイドル、一緒にやりましょう!」
比奈は俺と茜の顔を一度ずつ見て、それから視線をもう一度床に落とし――それから、俺のほうを向いて、ふっと笑った。
「しかたないっスね。原稿も手伝ってもらっちゃいましたし。ほんとに、なんでアタシなんだか、さっぱりわかんないっスけど――」
比奈はそこで、俺の目の奥を見詰める。
「比奈さんが、やっていただけるなら」
俺は混乱していた。俺は比奈にアイドルをやってほしいのか? それとも、やってほしくないのか?
自分で自分が判らなくなっていく。
「ぜひ、参加していただければ」
「やりましょうっ!」
茜が嬉しそうな声をあげる。
比奈は、ひと呼吸おいてから、口を開いた。
「……わかったっス。どうせ半ニートみたいな立場ですし……プロデュース、よろしくお願いするっス」
そうして、比奈はぺこりと頭を下げた。
茜がひときわやかましい、喜びの雄たけびをあげた。
「はー、なんだかものすごいことになっちゃったっス。アタシ、まだ夢の中なんじゃないっスかね?」
比奈はそう言って笑う。
「そういえばプロデューサー、夜通し手伝ってもらって悪かったっス。シャワーくらいなら貸せるっスけど……どうっスか?」
「いや、俺は……遠慮しておくよ、戻って浴びるから」
さすがに、女性の部屋のシャワーを借りるわけにはいかないと思った。
「そうっスか……じゃ、茜ちゃん、浴びてくっスか?」
なんでそうなる、というツッコミを入れる間もなく。
「いいんですか! では、お言葉に甘えて!」
浴びるのかよ。遠慮しろよ。お前はきのう家に帰っただろうが。
比奈はバスタオルを取り出すと、茜をバスルームへと案内した。
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