496: ◆FlW2v5zETA[saga]
2018/06/08(金) 05:30:47.44 ID:SfivEjrbO
帰りの飛行機の中。
膝の上にジュンを乗せて、ずっと窓からの景色を見ていました。
いつかふたりで南の島に行こうなんて、無邪気に話してたね。
並んで飛行機に乗る日を想像してたけど…今私の隣には、誰も座ってない。
ねぇ、ジュン。もう雲の上だよ。
人って凄いよね、ここまで空を飛べるんだ。
雲の上…天国だよね。
なのに、どうしてあなたはいないの?
イヤフォンから流れてくるのは、彼が好きだったあのバンド。
そのアルバムのタイトルは…ジャガーハードペイン。
“戦地で死んだ青年・ジャガーの魂が現代へとタイムスリップし、故郷に残して来た恋人マリーを探すストーリー”
そう銘打たれたコンセプトアルバム。
……私の“ジャガー”は、二度と蘇ったりはしないけど。
一人辿り着いた空港からは、夕暮れの海が見えました。
終戦から数ヶ月が経って、きっと平和な海を取り戻したはずで。
なのに…戦いの中にいたあの頃よりも、寂しいものに見える。
帰り道、柵に片腕を掛けて、私はずっとそれを眺めていました。
空いた手にジュンを抱えて、ずっとずっと、海を眺めて。
だから…足元にポタポタとこぼれて行くものがあったのは、私と彼しか知らない事でした。
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