495: ◆FlW2v5zETA[saga]
2018/06/08(金) 05:29:24.86 ID:SfivEjrbO
そして火葬が終わり、骨上げの時が来ました。
用意されていた骨壺は2つ。
大きな方はご家族の為に。もう一つの小さな方は…手元供養にと、ご両親が用意してくれたものでした。
焼かれてしまった彼の骨は、人の形を残しつつも、バラ撒かれたようになってしまって。
でも私には、どこがどの場所か理解出来て。
ここはいつも撫でてくれた指…ここはいつも見てた目…ここは…。
小さな骨を選んでは、それを器に入れて。
骨で熱を持った器は、桐の箱に入れても熱を持っていて…私の掌の中で、まだ生きているかのようでした。
だからでしょうか、まるで現実ではないみたいで。
寝て起きたら、いつもみたいにおはようって声を掛けてくれる気さえしてくる。
夢だと思ってるから、今泣けないのかな。
彼の実家へと戻る車の中、私はいつか膝枕をしてあげた日のように、小さくなってしまったジュンを撫でていました。
窓の外は、雲一つない青空。
「いつか故郷の景色を見せたい」なんて言ってた事を思い出して、私はずっとその空を眺めていたのです。
彼のお母さんはそんな私を見て、ただ優しく肩を撫でてくれました。
……上手く泣く事さえも出来ない、こんな冷たい私の肩を。
別れ際、お父さんは彼の遺品として、ある物をくれました。
それは最期に被っていた軍帽と…いつか私があげた、葉をモチーフにしたペンダント。
押収されたとばかり思ってたけど、ちゃんと渡ってたんだ…。
最期まで付けてくれていた、血まみれになったペンダント。
リズムが絶えるその瞬間まで、彼の鼓動のそばにあったもの。
赤い所に触れると、今でも鼓動が聴こえるようで…その幻を、一つ一つ噛み締めていました。
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