青葉「けしの花びら、さえずるひばり。」
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326: ◆FlW2v5zETA[saga]
2018/01/23(火) 06:21:57.05 ID:zzMbTBd6O
彼は青葉によって感情を取り戻して以来、暇を見つけては亡き友人達の墓参りをしていた。
今日が二人目の墓参りになる。

花と線香を手向け、手を合わせる。
続けて缶コーヒーと火の付いたタバコを供えると、彼もまた、自分のタバコに火を点した。

二つの紫煙が立ち上るが、吐き捨てられた煙は一つのみ。
生きる者の溜息と、吸われる事のない煙と。
その差が空へと舞い上がっては、風にまかれて消えて行く。

「……あの後色々あってな、サクラとは別れたよ。

昔は研修先の少佐にムカついて、いつかぶっ殺す!なんて俺らも息巻いてたんだけどなぁ…気付いたら俺も少佐だ。
二階級特進したお前らよりも、上になっちまった。

あのバケモノも、随分倒したよ…ケリが着くのは時間の問題さ。
今は新しい彼女も出来たし、こっちは何とか上手くやってるよ。
その子のおかげで、やっとこうしてお前の所に来れるようになった。

なぁ……そっちは、最近どうだ?」

どれだけ近況を伝え、訊ねてみた所で返事はない。
ただ風の音と、物言わぬ墓石がそこにあるだけだった。

やがて全てを伝え終えると、男は墓石に敬礼をし、その場を去って行く。

墓の床石には、少しだけ濡れた後が残っていた。
しかしその日は、どこまでも澄んだ快晴の空。


雨が降っていたのは、誰かの瞼と胸の奥だけの事だった。




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