251: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/11/16(木) 04:01:32.33 ID:j4j5Io3UO
落ち葉を燃やし始めるも、少し火力が足りないのだろうか?
彼女はもう一つのビニールからあるものを取出し、それも火にくべた。燃やしたものは黒の古着であり、ようやく充分な火力となったようだ。
焼き芋の仕上がりを楽しみにしているのか、女は微笑みながらその炎を見つめていた。
火の始末も終え、焼き芋を食べ終えた女は、風呂の掃除を始める。
浴槽と床を擦り終え、シャワーで洗剤を洗い流す。この時だけ何故か、女は湯沸し器の設定を下げていた。
設定された温度は、36℃。人肌と同じもの。
その温度が手に触れた時、女は何かを思い出している様子だった。
風呂掃除を終え、女は今度は調理器具を取り出した。
試しに野菜を一かけ切ってみると、包丁の切れ味が気になる。砥石を出し、まずは包丁の手入れを始める事にしたようだ。
しゃこしゃこと無機質な音が台所に響き、仕上がった所で洗われた包丁がまな板に置かれた。
しっかりと研がれた包丁は、先程よりも幾分綺麗になっていた。
照明が反射し、刀身が鈍い輝きを放っている。
そのまま彼女が下拵えを終える頃、一台の車が車庫へと入った。
だが車の主は家の灯りが点いている事に気付くと、その場に5分程立ち尽くし、ようやく家の鍵を開ける。
その顔には、複雑な感情が浮かんでいた。
「あ!パパおかえりー!」
「あ、ああ。どうしたんだ急に?」
「有給溜めちゃったみたいでさ、それで休めって言われて帰って来たの。サプライズって奴!」
彼は女の父親だ。
久々に帰って来た一人娘が、料理をして待ってくれていた。
そんな愛する娘の甲斐甲斐しい姿に、確かに喜びの感情もある。
だが彼は娘を愛していたと同時に、ひどく恐れてもいた。
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