252: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/11/16(木) 04:03:18.66 ID:j4j5Io3UO
「今日はキャベツあったし、豚が安かったの。カツにするから待ってて!」
そう屈託無く笑う娘が取り出したのは、豚のロース肉。
まな板に置かれたそれに、昨日自分が使った時よりギラつく包丁が入る。
ちぎれる音も無く、肉は一口大に切られていく。それは淡々とした日常の光景だった。
しかし最後の一欠片の肉が、娘の手で切られる時。
彼の目は、まな板に置かれた自身の首の幻を見た。
「…………っ!?」
「どうしたの?」
「い、いや、そう言えば会社に忘れ物をしたなって…明日ついでに取ってくればいいものだから、大丈夫だよ。」
カツも揚がり、仕上げられた料理が並ぶと夕食が始まる。
久々の娘の手料理は美味しく、ビールの味に1日の終わりを噛み締める。
何年か会う事も出来なかった時期もあり、娘が遠くで働く今も、彼にとってはこの時間は何より大切なものだった。
彼は何度も心の中で、「自分は幸せだ」と呟く。
何度も何度も、己に擦り込むように。
その日眠る前、携帯でニュースサイトを開くと、とある事件の見出しが複数躍っている。
『××県にてバラバラ死体発見。』
『__峠バラバラ殺人、遺体の身元は県内の男子大学生と確認。』
今夜は少し冷える。肩に震えを感じた彼は、早々に目を閉じた。
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