青葉「けしの花びら、さえずるひばり。」
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138: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/05/24(水) 04:03:52.61 ID:H6iAFqcy0
翌日の昼には、講習は全て終わった。

参加者は各々の交通手段で帰る。
電車の者、飛行機の者。そして車で戻る者。
ここまでの道は、高速を使って3時間。
自分の車で来ていた彼は、気が向いた頃に帰れば良いと言った状況だった。
それはこの街での自由時間が、まだある事を意味する。

彼はすぐに帰ろうとはせず、とある駐車場へと車を停めていた。
そこは、ある海浜公園の駐車場。
少し歩けば砂浜が広がり、シーズンオフの今、ここに彼以外の人影は無かった。

青空と海。それ以外は、この砂浜には何も無い。
一人ポツリと佇み、彼は潮騒の声に耳をすませている。
かつて『二人』で何度も見た、穏やかな海がそこにはあった。
今、彼の胸に去来するものは、一体何なのであろうか。


「……変わらないわね、ここは。」


そこに響くのは、儚げな細い声。
長い黒髪とスカートを揺らし、とある女が彼に声を掛けていた。

艦娘としての制服よりも、彼にとってはずっと見慣れていた私服姿。
戦艦・扶桑としてではない、かつての恋人の姿として、彼女は立っていたのだ。

「……久しぶりだね。」

「ええ…何年経ったのかしら。」

「少し、座ろうか。」

言葉少なに、二人は近くの石段へと腰掛ける。
肩と肩の隙間は30cm程、手を伸ばせば届く距離。
だが、彼らが触れ合う事は無い。手をつなぐ事でさえも。




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