127: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/05/18(木) 03:00:58.58 ID:3OWGQWfYO
同日・鎮守府駐車場。
一足先に鎮守府へと戻った彼は、車をいつもの区画へと停めた。
日も相当に沈み、外灯と殺虫灯のみが辺りを照らしている。
殺虫灯がバチンと音を立て、白い蛾がポトリと彼の先へと落ちた。
そこより少し先に視線を送ると、人の脚。
その影をなぞるように目を動かすと、そこに立ち尽くす者が一人。
青葉の姉妹艦である、衣笠だ。
「……青葉に、会ってたんですか?」
「ああ、たまたま出先でね。どうかしたかい?」
「あの子について、話があるの。
提督…青葉の元カレの事、聞いてます?」
「…聞いたよ。詳しくではないけどね。」
「そう…。提督、青葉の事、大事にしてあげて?
あの子、その相手に『初めて』を許したら浮気されて…好きな人が離れるのが、トラウマになってるから。」
「なるほどね………そういうことか。」
「………っ!?」
それを彼が聞いた瞬間の変化は、衣笠に衝撃を与えた。
衣笠にとっては初めて見る、彼の無表情な貌。
そこにある凍てついた視線は、彼女の背筋を冷たくなぞる。
そこに衣笠は、一瞬誰かも分からなくなるほどの違和感を感じていた。
「提督……あなたも、そんな顔するんですね。」
「さて…何の事かな?おやすみ、衣笠。」
衣笠の横を通り過ぎる頃には、彼はいつもの微笑に戻っていた。
衣笠はそれを一瞥すると、軽く手を振り彼を見送る。
彼女の足元には、先程電流に撃たれた蛾が一匹。
白い羽根を震わせていたそれも、やがて震える事さえ止めた。
「焼けちゃうぐらい、光に縋る…かぁ。」
その蛾の影に何を重ねているのか。
それは、衣笠だけが知っていた。
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