青葉「けしの花びら、さえずるひばり。」
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121: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/05/15(月) 05:32:30.67 ID:QOyJbMOhO
その日から数日後、青葉は原付を飛ばしてあの浜辺にいました。

その日はお休みでしたけど、予定の合う人が誰もいなくて。
大岩に座ってイヤフォンを嵌めて、ある音楽を掛けていました。

ゆうべ暇を持て余して、映画でも借りようかとレンタル屋さんに行ったんです。
執務室のプレーヤーに出てたタイトルを覚えていて…何となくCDコーナーに行って、あの日掛かっていた曲が入ってるアルバムを借りました。

それは、『聖なる海とサンシャイン』と言う曲。
それを聴きながら、今はぼーっと空と海を眺めています。

今日はあの日と同じように、曇り空。
あの日と違うのは、たまに雲間から夕焼けが差していたのと、隣に誰もいない事で。
一人っきりでこの景色を眺めていると、ここの寂しさが改めて浮き彫りになります。

天国みたいな場所だって、あの時言ってたっけ。
その時よりは深く彼を知った今、その言葉の意味が少し分かったような、分かりたくないような。そんな気持ちになりました。

目の前で仲間が残酷な死に方をして、自分も死にかけて。
何も感じなくなる方が、もしかしたら幸せなのかもしれない。
その後も昔の仲間も失って、恋人とも別れて…それでも彼は、悲しむ事さえ出来なかった。

それはより、天国への憧憬を強めさせたのかもしれません。
ああ、でもきっと憧憬なんかじゃなくて…それはそこに隠した、死への願望なんだ。

相変わらず、寂しい光景が青葉の前には広がっていました。
悲しくも綺麗でもない、ただただ寂しい海辺。

彼の心が、今もいる場所。




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