105: ◆FlW2v5zETA[saga]
2017/05/08(月) 02:43:26.48 ID:hghrd//O0
「これ、誰かわかるかしら?」
「え……この方、司令官ですか!?」
そこに写っていたのは、青葉が今一番この目で見たいと願っているものでした。
幸せそうに、心からの笑みを見せる顔。
どこかでの記念撮影でしょうか、二人とも本当にいい笑顔で…青葉の記憶の中では、未だに見た事が無い顔でした。
「ふふ、いい写真でしょう?」
「初めて見ましたよ、あの人のそんな顔…。」
「昔はよく見せてくれていたの…あの日まではね。」
「……そう、ですか。」
胸に鉛を突っ込まれたような感覚と言うのでしょうか。
あの日まではと言う言葉が聞こえた途端、羨望さえもどこかへ消えてしまいました。
やっぱり、あの時から彼は……。
「退院した後、やっぱりどこか空っぽでね…お医者さんは精神的なショックだろうって言ってたわ。
学生時代の友達が亡くなられたのを伝えても、上の空だったの。
…手首の事、知っているかしら?」
「……見ちゃいました。ズタズタで、時計でも隠しきれてなくて…。」
「最初ね、私が見付けたの。血の海で、フラフラしてたけど……貼り付けたような笑みを浮かべてたわ。
また入院したけど、やっぱり精神的なショックだって周りは思ってた…でも、それは違ったわ。」
「何か言ってたんですか?」
「“今ならそれで片付けられると思った”って…笑いながら言ったわ。」
「……!!」
「彼はね…あの件で、心だけが死んでしまったと思うの。
そうね…“寂しいや悲しいと感じられない事が、寂しくて悲しい”って…笑って……。」
__さん…そっか、あの公園の時隠れてた顔は…。
間近にいた人からの話は、とても重いものでした。
感情の欠落…嘆くべき事を嘆けない事……司令官のいる場所は、青葉にはどう頑張っても想像しきれなくて…。
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