メイド「私の嫌いな貴方様」
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138: ◆TEm9zd/GaE[sage saga]
2019/03/09(土) 20:12:02.91 ID:XWj0qJN60
………………。
…………。
……。



語られた内容に、驚きを隠せなかった。
まさか、先輩がこんなにも聞き分けがいいと思わなかったから。

女「よくもまあ……」

大立回りをしたもので。
いつもの彼女からは想像もつかないアグレッシブさ。

なにが彼女を突き動かしたのか、何て言うのは野暮だろう。
それほどまでに私のことを思ってくれているのだ。
ちょっと照れ臭ったりする。

女「ギャル先輩来たよ。……友達になった」

お嬢様「そうですか……よかった」

お嬢様はそれきり黙りこくる。
もともと彼女はおしゃべりが得意という訳ではない。
無理に話さなくても良いと、普段ならこの沈黙の中に居心地のよさを見いだすのだが、今日に限ってはそうはいかない。

女「……聞いたんだよね、私の好きだった人の話」

お嬢様「……はい」

先程お嬢様の口から語られた言葉。
その中で見事ギャル先輩は私の性癖を暴露してくれやがった。

できれば知られたくなかったこと。
ぶっちゃければ私は同性愛者ということに引目を感じている。
なにせ初恋が初恋だ。中学生の頃、恋バナをしていて周りと話が合わないなと常々感じていた。
やれイケメンの俳優が好き、やれイケイケなアイドルが素敵……等々、そう言われてもいまいちピンとこなかった。
どちらかと言えば可愛らしいアイドルや、麗しい女優に食指が動いたのだが、表には出すことは決してしない。
自分がおかしいと思っているから。
世間から見たら違うことを秘めている。それは隠し通さなくてはいけない。
なぜならば、排斥されるから。
出る杭は打たれるとは良くいったものだ。

他者と違う。
それだけで、周りから外れ、滅多うちにされる。
世界はそうできているのだ、とは今まで生きてきて自ずと学んだこと。


だから、困る。
お嬢様は、いい娘だ。
私なんかのために体を張ってくれた。
だけど、その結果、守ったのは世間から外れるマイノリティ女だと知ってしまった。

あんまりではないか。
お嬢様は出る杭の代わりに打たれようとしてくれたのに、これじゃあ報われない。

……いや、綺麗事は止めよう。お嬢様のことを憐れんでいるのではない。

困るのだ、私は。
困ってる。

優しいお嬢様のことだ。
こんな私でも拒絶はしないだろう。
でも、色物を見る目――展示されている何を表現しているのか理解不能な絵画を見るときと同じ視線を向けてくるに違いない。
それが、嫌だ。嫌なのだ。




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