934: ◆8zklXZsAwY[saga]
2019/08/18(日) 20:22:38.27 ID:TPJ777ywO
アナスタシアは驚愕のあまりわずかなうめき声すら出せなかった。そのせいか背後で平沢がナイフを抜いた際、ナイロン製のケースと擦れる静かな音がいやに耳を衝いた。平沢はドアの前まで来ると永井が指し示した箇所をナイフで引っ掻き、バツを描いて目印を作った。
永井「佐藤がどうやってあの穴を開けたか……」
言いながら、永井は平沢と入れ替わるように階段の方へ戻っていった。数段下りると振り向いてしゃがみこみ、右腕を一番上の踏段に置いた。
永井「まず、奴は自分の腕を切り落とした。手持ちの道具ではそれなりに時間がかかっただろう。次にその腕を復活時、回収できる範囲外に捨てる。過去のデータから見て五〜十メートルで圏外だろう。そして社長室に戻り、自殺。新しい腕が作られる。が、そこで傷口をドアに押し当てた。こうすると腕を作り出さなければならない空間に障害物ができるわけだ。亜人はどんな状況だろうと肉体をフラットに戻す。再生の障害となる物体があれば、それを分解し始める。そうやって穴を開けた」
アナスタシア「物体を、分解……?」
永井「特別なことじゃない。おまえや中野の肉体でも何度も起きてることだ」
印をつけ終わった平沢がアナスタシアにナイフを手渡した。
永井はナイフを見つめるアナスタシアを見上げながら話を続けた。
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