685: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/10/15(月) 21:10:49.24 ID:z5kRHM0CO
気温は二十度をすこし上回るくらいで、昼時に比べるとずいぶん涼しくなっていた。おまけに夜風がおだやかに森を吹き抜けていたので、木々の心地よいざわめきが起こり、秋虫の鳴き声と重なって調べをつくっていた。
永井は低い石垣に腰掛け、ひとり考えにふけっている。
月の光は葉の上側だけを照らしていたから、永井のいるところには細い光線が幾条か射し込んでいるだけだったが、樹木から吊るしたLEDランタンが蜂蜜のように黄色く透明な灯りで明るい場所をつくり、座った目線にちょうどいい位置にピンで木に留められた資料の細かい文字まで読めるよう照らしだしていた。
皮膚や眼や鼓膜にやわらかく触れる、包み込むかのようなこの環境を永井も感じていたが思考に追われ、風と光に身を任せるほど意識にのぼってきてはいなかった。
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