561: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/02/18(日) 21:43:46.73 ID:oL93h30zO
永井はあきらめたようにうなだれた。永井の右手には五〇〇ミリリットルのコーラのペットボトルが一本あるだけだった。
中野「おれらの分は?」
永井「おまえが急に叫ぶからだろ」
永井はなじりたくなるのをなんとか我慢した。
中野が永井に文句を返すなか、アナスタシアは不安がぶり返し、のど元までせりあがってくるのを感じていた。
永井と中野に再会したことで、アナスタシアはとある思いを抱きはじめていた。覚悟を決めなければならないという思い。亜人として生きていく覚悟、佐藤と戦わなければならない覚悟を。
あたりまえのことだが、このような覚悟を決めるということはアナスタシアにとって、とてつもない困難だった。亜人のテロリストと戦うしかないという現実を、どうのみ込めばいいのか。アナスタシア十五才の少女でしかないのに。途方にくれ、もうひとつの現実に対する覚悟、自分はもう亜人として世間に認識されているということに考えを向けると、アナスタシアはもうどうしようもなくて、恐怖する。おののく。その容姿のせいで、ものめずらしい目で見られることは頻繁にあったが、これからは決して見られてはならない。すべてを剥ぎ取られた姿を見られてはならない。剥奪されてしまった。保障もない、権利もない、人間ではない、命だけはあって命しかない、亜人。
美波の弟とおなじになってしまったが、彼は決してアナスタシアを助けてくれない。それどころか気にもとめない。犠牲にされるのがせいぜいだろう!
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