新田美波「わたしの弟が、亜人……?」
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549: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/02/18(日) 21:26:12.88 ID:oL93h30zO

アナスタシア「ミナミを、元気にしたくないの?」

永井「それは僕が気にしなきゃいけないことか?」


 冷徹な響きがアナスタシアを打ちのめした。それは非情さが現れた言葉だとアナスタシアは思ったが、つぎに続く言葉でそれは間違いであることに気づいた。


永井「僕がいまどんな状況にさらされてるのか、おまえ、わかって言ってんのか? 佐藤を拘束し事態を収束させなきゃ未来はないんだぞ」


 冷徹ではあったが、責めるような響きはなかった。それでも、アナスタシアの心を苛めるには十分な冷たさを備えていた。永井の不満はアナスタシアの要求そのものにあるのではなく、要求の仕方にあった。アナスタシアの要求は、交渉や駆け引きの要素が微塵もなく、無防備といっていいほど直截的に、美波に救いを与えるように永井に頼もうというものだった。救いは永井のほうが欲しいものなのに。永井からしてみれば、これは無能力の証左以外の何物でもなかった。バカでも独力で佐藤からも亜人管理委員会からも逃げおおせた中野のほうがまだ役に立つ、と永井は心中でひとりごちた。

 結局ただのガキか。永井はアナスタシアへの興味を失っていた。スケープゴート以外の価値を見出だすのは面倒ではじめから乗り気ではなかったが、そのつもりもすっかり消え失せてしまった。

 アナスタシアもそのことは感じ取っていた。そのことに怒るでもなく、アナスタシアは自分を責めた。正しく怒ることをせず、自責に流されるのは楽だった。というのも、アナスタシアは自分が永井だけでなく、美波に対しても、何ら善い影響を与えられないと分かり始めたからだった。



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