新田美波「わたしの弟が、亜人……?」
1- 20
550: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/02/18(日) 21:27:26.77 ID:oL93h30zO

 永井は階下から視線をはずして、スマートフォンを操作した。新着メールが届いてないことを確認すると、ため息をついた。アナスタシアは最後の希望を込めて、永井に訴えかけようとしたが、永井が先に口を開いた。眼はスマートフォンに落としたままだった。


永井「自分にそれができないからって、僕に勝手な期待をかけるな」


 ちょっとした忠告の響き、聞く人によってはアドバイスのように響く声だった。だがアナスタシアにとって、これは宣告に等しかった。いま現時点において、おまえは無意味だという宣告。過去はどうあれ、いま現時点において、おまえはだれに対しても救いをもたらせられない。おまえは存在する、息をする、鼻と口だけ使って、舌は使わず、だれかがおまえに眼をむける、しかし、気にもとめない、すぐに視線はよそへ行く。おまえは存在し、それだけだ。息をする、それだけだ。

 アナスタシアはふらつきながら立ち上がった。両足に力は入ってなく、身体はふらつき、頭が揺れた。倒れないのが不思議だった。やがて、夢みるような心持ちで、無意識に歩き出した。その夢遊病者のような、儚く離れ行く背中に永井が「おい」と声をかけたが、アナスタシアはうつむいて反応を見せないまま歩き、おぼろげな薄明かりを越え、夜闇のなかにいなくなった。

 永井はまた眼をつむった。頭を悩ませてる奴が勝手に姿を消してくれた。不確定要素が去ったいま、永井はひと休みすることにした。


ーー
ーー
ーー



<<前のレス[*]次のレス[#]>>
968Res/1014.51 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice