543: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/02/18(日) 20:55:01.19 ID:oL93h30zO
アナスタシア「ミナミ、心配、しています……」
永井「それはまえに聞いた」
永井の意識が会話から離れかける。アナスタシアはあわててディテールを、つまり何を心配しているか、美波が弟の安否の次に心配していることを説明する。
アナスタシア「プレス・コンフェレン……(アナスタシアはロシア語の発話をここで中断した)……アー……きしゃ……記者会見、ミナミは、あなたがミナミの会見のせいでつかまったかもって思って……」
永井「それ見てない」
永井はあっさりと言ってのける。他人事のように。というより、アナスタシアにとって美波の心痛は他人事だろうとでもいうような言い方だった。
永井「僕が捕まったのは、佐藤にハメられたからだ。おおかた、人間への憎しみを植えつけて仲間にするために実験体として差し出したんだろう。田中のときの経験かな」
永井は自身の体験を小動物を解剖するかのように分析した。アナスタシアにとって、この冷徹さは何度見ても信じがたいものだった。それは、いままで生きてきた世界に、永井のような人間はひとりも存在していなかったからだ。切り刻まれたことも、切り刻むことも、同じようなことだと言わんばかりの態度。
この瞳を揺らすのに必要な言葉を探すため、アナスタシアは必死に頭を回転させた。美波の弟に人間的な面があると信じられる理由がどうしても欲しかったのだ。
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