544: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/02/18(日) 20:56:38.05 ID:oL93h30zO
それを探してまずはじめに思い浮かんだのは、森の中で見た永井のしかめ面だった。スマートフォンから漏れ聞こえてくる怒声に困っていた顔。いま思えば、あの怒声は永井に向けられたものではなかった。永井なら怒鳴られたところで眉ひとつ動かすでもなし、そもそもなぜ電話に出たのだろう?
その疑問が頭に浮かんだ瞬間、パズルのピースが音をたててはまった。電話越しの罵倒の言葉が小楢の木の下で永井が口にした「おばあちゃん」という語とイコールで結ばれ、ひとりで森を引き返した永井がなにをしに行ったのか検討がついた。そして見当がつくと、研究所の屋上で、永井はやっぱり研究員を助けていたのだと確信できた。
意識を思考から頭上にもどすと、永井はふたたび瞼を閉じようとしていた。アナスタシアはあわてて口を開いた。
アナスタシア「研究員のひと……助かりました、生きてます」
永井「ああ、あのひと。よかった」
アナスタシア「ダー……! そうです、よかったです」
アナスタシアの眼がぱっと輝いた。電灯が光を落としているところに身を乗り出したので、顔が照らされて表情がよく見えた。永井はそれを見て、やっぱりかと期待はずれの予感は正しかったと感じた。
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