545: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/02/18(日) 20:58:52.13 ID:oL93h30zO
アナスタシア「おばあちゃん、森での電話も……」
永井「あの研究員には利用価値があった」
アナスタシアがしゃべっている途中で永井が出し抜けに、理解を正すために口をはさんだ。
永井「彼は亜人の理解者だった。それでいて政府に属しているのはポイントが高い。一、二回死んでも助ける価値はあるよ」
アナスタシア「りよう、価値……?」
永井「そう。利用価値の有無」
アナスタシアの口からこぼれたその言葉は、まるでその口から初めて発せられたように響いた。期待していた答えとの落差に、瞳からさっきの煌めきがなくなった。永井の冷徹さが大気を通して伝わり、そのせいでアナスタシアの青い眼を氷のように固めたかのようだ。
すこし離れたところから、チリンチリンとベルの鳴る音がした。スナックのドアが開けられ、何人かの客が談笑しながら店に入っていった。ドアの隙間からカラオケを熱唱する声が流れてきて、アナスタシアの耳まで届いた。ジョニー・サンダースの〈サッド・ヴァケイション〉。調子はずれの歌声は、歌っている本人にはサンダースの声のように聞こえているのだろう。
永井は何の反応も見せないまま、困惑するアナスタシアを見下ろしていった。
永井「まさか、善意から助けたとでも思ったか?」
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