454: ◆X5vKxFyzyo[saga]
2017/09/25(月) 21:12:01.68 ID:4fkctst+O
《それからはじめに私は見た、天頂から落ちる星のように垂直にくだってくる、つばめのように、あるいはあまつばめのように素早く/そして私の足の?骨のところに降り、そこから入りこんだ/しかし私の左足からは黒雲がはねかえってヨーロッパを覆ったのだ》
目を覚ました瞬間、美波の脳裡にブレイクの預言詞『ミルトン』の一節が浮かんだ。それは美波が見た夢の内容そのものだった。輝く落下物が描く垂直線と盛り上がり弾ける地面、それ続く空を覆う黒雲の面。
不吉な内容だったが、美波は不安を感じてはいなかった。不思議と身体も軽い気がした。
美波はベッドから起き出し、部屋を出て階下へと向かう。
ラウンジはがらんとしていた。みんな、レッスンか仕事に出ているのだろう。女子寮全体もしんとしている。
美波は無人の空間が作る静けさにほっとしていた。仲間たちが心配してくれる気持ちはうれしかったが、その気持ちに応えるため元気になろうとしても美波にとってそれはすぐには不可能なことだったから、ひとりでぼーっと過ごせるのは何より落ち着くことだった。
美波はあまり意識しないままテレビをつけた。それから、そういえばテレビやスマートフォンは禁止されていたっけと思い出す。だが、いまの気持ちのよさに水を指す気がして、結局テレビをつけっぱなしにして、美波はソファに凭れこむ。
『現場では必死の消化活動がつづいています』
美波は一瞬、自分はまだ夢の中にいて、入れ子になった夢をテレビ越しに見ているのかと思った。だが、身を乗り出したときに感じた体重の移り変わりに現実感を覚え、あらためてテレビを注視する。そこには崩壊した建物と黒煙をあげる炎が映っていた。
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