310: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/07/08(土) 13:26:04.88 ID:8mPTevMeO
「どうしたんだ、ふたりして抱きあって?」
と、祖父はたずねる。そのとき、彼はカーペットの血の跡を見つける。視線は息子と孫に移動し、ベソをかいているアーニャの髪の毛の赤いところに眼をみはる。
「亜人だ」
「なに?」
と、祖父は訊き返す。慌てふためいて問い詰めるということをするには、まだ眼に映る現状への理解が足りず、祖父は呆けたみたいに口を開けたまま。アーニャのすすり泣きの声に、祖母と母親も居間にやってきて心配そう。父親は三人の顔へ視線を移しながら、また同じことを答える。
「アナスタシアは亜人だ」
部屋のなかにいる全員がその声を聞き、それは涙と鼻水で顔がぐずぐずになっているアーニャも例外ではなかったのだが、このたった五歳の女の子だけが、父親が言ったことの意味がわからない。ただ、とても怖くて痛い思いをしたという、そのことだけがはっきりと記憶に残っていた。
アナスタシアが亜人だと発覚したのはこういう事情だった。折同じくして、日本でも国内二例目の亜人発見が話題になっていたので、かれらはアナスタシアの秘密を死んでも守り抜こうも心に誓った。
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