309: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/07/08(土) 13:24:35.42 ID:8mPTevMeO
「偉大なロシア人というものは、頭を斧で割られて死ぬものだそうだ。たとえばトロツキー、それと『罪と罰』の老婆」
「あの老婆は俗物じゃない」
そう反論したのはアーニャの祖母だ。
「ドストエフスキーが生み出した人物だから、俗物でも偉大なんだとさ」
「その人、アル中患者でしょう?」
「そりゃ病院だもの。アル中はいるさ」
アーニャの母親は日本人だが、流暢なロシア語で会話に加わる。
「ラモン・メルカデルはピッケルでトロツキーを殴ったんじゃなかった?」
「そりゃ、まあ……」
母親は買物袋の中身を冷蔵庫へ移し替え、祖母は電熱式のサモワールで紅茶を淹れ始める。祖父はティーカップを準備するとやることがなくなり、女性陣から台所を追い出される。しかたなく上着を脱ぎながら居間の方へ移動すると、息子が孫を抱きかかえてひざまづいているのに気づいて怪訝に思う。
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