308: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/07/08(土) 13:23:25.20 ID:8mPTevMeO
そのとき、アーニャの眼がぱっちり開いた。ぼおっとなっていたのは一瞬で、みるみる顔はゆがんでそしてアーニャは大声で泣き始めた。額を打ったことを覚えていたし、それが最期の記憶だったから、怖かったし、痛みもあると思い込んでいたのだ。とてもおおきな声で泣いたから、アーニャは息継ぎをしなければならなくなった。そこでアーニャは自分を見下ろす父親に気がつく。父親は眼を開けたまま微動だにせず、石像みたいに固まったまま。ぜんぜん心配してくれないから、アーニャはまた泣き始める。こんどは大声は出さず、ぐじぐしと洟を啜るような泣き方。
ようやく父親がアーニャの介抱を再開する。娘を慰めながらおでこの傷を確認してみると、裂傷も頭蓋骨の凹みもきれいになくなっている。何事も起きなかったようにつやつやしたまるいおでこだったが、その皮膚の上や銀色の髪の毛には血がこびりついたままで、それはカーペットや床も同様。
と、そこへアーニャの母親と祖父と祖母が帰ってくる。三人は病院帰り。アーニャの祖父の虫に刺されでもしたのか、瞼が赤く腫れ痒みもあるので病院に行っていたのだ。他の二人は付き添いというか、祖父が診察を受けいているあいだの買い物目的で同行していた。
祖父はふたりに待ち時間のあいだに隣だった赤い顔の男が彼に語った内容を披露していた。
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