新田美波「わたしの弟が、亜人……?」
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311: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/07/08(土) 13:27:32.68 ID:8mPTevMeO

さて、話をふたつめの不幸なできこどに移すが、これはひとつめの出来ごとから半年後の話で、事件といってもいいかもしれない。なぜなら、アナスタシアの祖父の友人である、質屋を営むペシコフという男が、真夜中に後頭部を斧でしたたかに打ちのめされ、砕けた頭蓋骨を歩道に散りばめるはめになったからである。モスクワ郊外の人通りまばらな、雪と泥だらけの小道は、ペシコフの頭があったところがすこしのあいだ、ねっとりとした赤色に染まっていたが、一時間もしないうちに雪に埋もれて見えなくなった。

この事件はさらに悲劇的なところがあった。ペシコフは寒さが厳しくなってくると、古くなった茶色い外套をいつも身につけ身をちぢこませることを習慣としており、これはぬくぬくとした部屋の中でも行われていたのだが、彼の愛用する、というよりキツネやウサギの毛が寒い季節に冬毛に生え変わるように、ペシコフが灰色の空から冷たい突風が吹き荒ぶこの季節につねに彼の肌を覆っていたその外套は、彼の身体からすっかりなくなっていて、あわれなペシコフの亡骸には肌着しか残されておらず、狩りで仕留められ、皮を剥がれた獲物を連想させる有様となって冷たく凍った路面の上に横たわっていたのだった。




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