30: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/01/03(火) 00:41:13.07 ID:5kzXp0UHO
アナスタシア「ミナミ、気持ち……落ちつきました?」
まるで美波の様子が見えているかのようにアナスタシアは言った。
31: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/01/03(火) 00:42:17.63 ID:5kzXp0UHO
電話を終え、美波は夢についてひとり考え込んだ。精神分析に頼らなくても原因は、弟を中心にした家族の現在にあるのは明らかだった。もはや、過去は取り戻せないのだということを認めるべきなのだろう。弟ほど極端でなくても、わたし自身、過去の出来事から優秀であろうとし、それを実践してきたのだから。わたしたち家族は、すでに離散してしまったのだ。その過去を都合良く忘れ、むかしの家族を理想化し、その再現を試みることほどむなしい行いもないだろう。
過去は牢屋のように堅固としているかと思えば、煙みたいにかたちがなくなったりもする。資料が残っているような歴史的な過去の出来事についてならまだいい。それならやりようはある。だが記憶だけが頼りの、個人的な思い出の場合はそうはいかない。思い出はひどく気まぐれで、子どもが裏切ったときみたいに手酷い痛手を与えることもしばしばだ。
32: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/01/03(火) 00:43:32.60 ID:5kzXp0UHO
徒労をおぼえた美波が、逃避的に考えを別のことにむけたときーー自分自身のすこしさきの未来、七月二十七日。美波の二十歳の誕生日のことーー部屋のなかに三人の少女が入ってきた。レッスン終わりのニュージェネレーションズだった。
凛「お疲れさま。美波もレッスン終わり?」
33: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/01/03(火) 00:44:51.05 ID:5kzXp0UHO
美波「でも、なんだか大げさじゃない?」
卯月「そんなことないですよ! 美波ちゃんはシンデレラプロジェクトのリーダーなんですから」
34: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/01/03(火) 00:45:55.56 ID:5kzXp0UHO
武内P「新田さん、いまどちらに?」
35: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/01/03(火) 00:49:41.70 ID:5kzXp0UHO
大声に振り向くと、慌てた様子の卯月がドアの近くに立っていた。開いたドアからは部屋のなかにいる凛と未央が見える。ふたりともテレビと美波のどちらに視線を向ければいいか、本気で迷っているようだった。卯月は美波を呼んだものの、それからさきに続ける言葉を見失っていた。
美波が不審に思っていると、部屋のテレビからアナウンサーのものとおぼしき声が聞こえてきた。臨時ニュースのようで、原稿を読み上げる音声はまだそこに書かれた文章に馴染みきっていない。さっきのプロデューサーの話し方と似てる、そう思いながら美波はドアを通った。背後から卯月の、あ、あのーー、という躊躇いが滲んだ声が聞こえてきたが、美波は足を止めなかった。テレビは国内三例目の亜人発見のニュースを伝えていた。三例目の亜人は高校生で、下校中にトラックに轢かれ死亡したが生き返ったところを大勢の人間に目撃されていた。亜人の名前は永井圭といった。
36: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/01/03(火) 00:57:02.48 ID:5kzXp0UHO
今日はここまで。設定を説明するために地の文が多くなってしまいました。次からはもうすこし読みやすくするよう心がけます。
そういえば新田さんと永井の妹慧理子の声ってどちらも洲崎綾さんなんですね。書きながら気がつきました。
ブレイクの詩は岩波文庫から出てる松島正一編『対訳ブレイク詩集』から引用しました。
37:名無しNIPPER[sage]
2017/01/03(火) 01:47:34.92 ID:itwWq4Syo
なんだこれすげぇ おまえさん本職かい
38:名無しNIPPER
2017/01/03(火) 01:47:37.42 ID:42Rcb4rD0
乙、面白そう
39:名無しNIPPER[sage]
2017/01/03(火) 04:38:58.55 ID:AUKuv2Ol0
おつ、亜人ぐらしの人か
デレアニ側からは亜人1人だけなのか。ちょっと物足りない気もするけど期待
40:名無しNIPPER[sage]
2017/01/03(火) 08:29:53.49 ID:0JFSSC/6O
凄く期待できる始まり方
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