116: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/03/24(金) 22:28:56.65 ID:NJ9NkxEDO
赤信号になり、車は信号待ちに入った。反対車線では病院前のバス停からバスが出発するところだった。
律『慧理子のこと、頼むわね。今日はそっちに行けそうにないから』
美波「でも……」
律『あれでも、ほんとは兄さんのことを心配してるのよ』
律がそう言ったとき、車は病院に到着した。バス停のベンチには乗り遅れたのか、男がひとり腰を下ろしていた。車を降りるまで美波は義母と電話をしていたが、それ以上たいした話はできなかった。病院のロビーを抜け、エレベーターに乗り、廊下を歩いているあいだ、美波はどうしたら妹の意固地を解きほぐすことができるのだろうと考えていた。いまではこの考えが可能性から不可能性に傾き、美波の心に影を作っていた。美波はうつむき、そのせいで視線は弱まったが、沈黙の重さも増していった。病室の誰もが口をあげられないなか、下村がぽつりと言葉を発した。
下村「……私は、親族が亜人だった人を知っています。私に、その人の苦しみを推し量ることなど到底できません。ですが私は、その人やあなたたちのような人をこれ以上増やしたくはないのです。だから亜人のことをもっと詳しく解明したいのです」
美波は頭を上げ下村を見た。慧理子も頭は動かさなかったが、瞳は下村のほうへ向いていた。下村の言葉にはせつない実感が滲んでいて、言ってることに嘘はないように美波には思えた。
下村「どう生まれるのか、完全に不死なのか、本当に人間でないのか……どんなささいなことでも結構です。なにか人と違ったことなどありませんでしたか?」
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