39:名無しNIPPER
2016/11/20(日) 23:14:09.76 ID:qJIGiTwi0
「えっ…?」
ありすは思わず肩から手を離し、固まった。
背後で、先ほどの男子学生が救急車を呼ぶ声が聞こえた。
見えたのはほんの一瞬だったが、ありすは今の「オレンジ色」を知っていた。
いや、知っていたと言うより、見たことがあった。
「そん、な…なんで…」
ありすは尻もちをついたまま、一歩、二歩と後ずさりした。
その指が、カチャ、と何かに触れた。
「…っ」
振り向くと、隣の机の下、シックな床板と机脚にはあまりにも不釣り合いな、「何とも形容しがたい形状の塊」が落ちていた。
そしてそれも同様に彼女は知っていた。
「なんで…なんでですか、なんで、これが…ここに…」
それは間違いなく、紗南が"変身"したあのベルト。
「きゃあああああああっ!」
感情を表に出す暇もなく、悲鳴が店内に響き渡った。こちらを不安げな顔で見つめていたウエイトレスの悲鳴だった。
その視線の先は彼女よりさらに奥、ありすは再び文香のほうへ向き直った。
「文香、さん…っ?」
文香の体中から、オレンジ色の粒子が炭酸水の気泡めいて泡立ち始めていた。
それは瞬く間に彼女の身体を覆い隠し、オレンジ色の泡立つ塊へと姿を変える。
「これ、って…」
ありすは茫然とそれを見つめる。
そしてその中で、不思議な冷静さである答えにたどり着いた。
「あの時の…未央さん…まさか…」
紗南がガンマン怪人と戦っていた時、そのすぐそばで倒れていた未央。
弱ってはいたが外傷は無く、ガンマン怪人が消えるとすぐに安静を取り戻した未央。
オレンジ色の球体がいたときは、あんな目立つ服を着ていたのに誰も彼女に気付かなかった。
そして今、泡立つオレンジ色の物体の中に、文香がいる。
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