志希「それじゃあ、アタシがギフテッドじゃなくなった話でもしよっか」
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115:名無しNIPPER[saga]
2017/03/10(金) 20:37:15.51 ID:prvI6nFf0

――それでさ。気づいたらいつの間にか、アタシ達は車の中で、これまでの出来事を話していたの。

才能を失ったことを言ったとき、彼はずいぶんと目を丸くしてたと思う。もちろん理由は言わなかったけど、そもそも信じてくれないと思っていたものだから、彼の反応にアタシもまたびっくりしていたね。

朝ごはんにはサンドイッチを食べるようにしてる、なんていう些細なことでさえも彼は喜んでいた。他の誰かが聞いたら何が面白いのかもわからないことでも、アタシ達はふたりして凄い時間をかけて話しあったんだ。

車内は相変わらずさむかったし、体も凍えてしまいそうなくらい冷たくなっていたけどさ。アタシの右手だけは、そのときは、ずっと温かかったんだ。

フロントガラスからは、見惚れるような夜空が覗いていてね。話疲れたアタシ達は、辺り一面雪景色の中で、星の数を数えたりしたの。

何ていうかさ。これまでのアタシはそーいうことを楽しむ余裕もなかったんだと思う。ううん、これまでだけじゃない。ギフテッドだったときを遡ってみても、アタシはこんなにも星が綺麗だって思えなかったんじゃないかな。

どう言えばいいのかは分からないけど。こんなことを経験してみて理解したことがあるんだ。つまりね、人って生き物は、本当にきれいなものを見るために、時として絶望だとか不幸みたいなものに身を落とさなければいけないってことなんだとおもう。

たぶん、過去のアタシはずーっとそれを求めていたんだよ。そういう景色を、彼と一緒にみることをさ。




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