モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part13
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296: ◆EBFgUqOyPQ[saga sage]
2016/10/18(火) 02:12:19.90 ID:nZ3oq+wSo

 突如として押し出された李衣菜は何事かと奈緒に問うが、その瞬間には何が起きていたのかを悟る。
 奈緒の背後、先ほどまで自らが立っていた場所には、幾重にも束ねられた蛇の頭のような捕食器官が床に食らいついている。
 その顎の濁流はよく見れば、さらに細い髪のようなものが編み上げられて構成されており黒色の水で濡れているかのように滑らかであった。

「っつあ!」
「ぐえっ!」

 奈緒の押し出しによって、受け身も取れずにロビーの床に叩きつけられた二人は情けないうめき声をあげるが、すぐに体勢を立て直す。
 すでに二人の眼前には別の咢が迫りくることを知っていたからだ。

「くそっ!」
「やばっ!」

 奈緒はそのままさらなる回避を試みる。
 地を這うように追尾してくる蛇の顎は、生物的な特徴を感じさせない顎のみという捕食器官としての役目だけを醸し、無感情にかつ執拗に奈緒を追い回す。

 一方奈緒のような機動性を持たない李衣菜はそのまま向かい打つ。
 だが1本の太い柱のようなものが正面から向かってくるのではなく、相対するのは縦横無尽に蠢く蛇の顎だ。
 決して2本しかない両の腕で防ぎきれるはずがない。手に持ったギターを振り回し顎を振り払ってもじりじりと確実に傷が体に刻み込まれていく。
 数秒も待たずして全身は咢に食いつかれ、今立っていられるのはその持ち前の頑丈さ故でしかなかった。

 このままでは李衣菜は一方的に肉を抉られ続け後には何も残らない。
 だが当人である李衣菜は、この状況を薄く笑っていた。

「こんだけ食いつかれれば私も逃げられない。

だけど……あんたも逃げられないよね!」

 李衣菜の体から迸る閃光。
 李衣菜はわかっていたのだ。これらの顎が捕食器官であり、『主』の腹を満たすための物であることを。
 これは遠隔操作された別のカースではない。要するに、顎の根元を探れば本体に行き着くという道理である。



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