モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part13
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297: ◆EBFgUqOyPQ[saga sage]
2016/10/18(火) 02:13:14.52 ID:nZ3oq+wSo

 そして李衣菜の放電は自らが活動するためのエネルギーを放出するというある種の自滅技であるが、この際四の五のは言ってられない。
 李衣菜から放出された電流は食いついた蛇の顎を伝い、狙い通りにそれらを使役する『主』の元へと届く。

『ア、アアアアアアアアァァァァ!!!』

 未だ上がる粉塵の中から響く叫び声。
 くぐもった少女の声のようなそれが響いた瞬間、李衣菜に食らい付いていた顎の拘束は一時的に力を失う。
 同時に奈緒を追いかけていた蛇の群れもその追走を停止させた。

 李衣菜は放電直後のために満足に動くことはできない。
 だがその隙を見計らい奈緒は床を渾身の力で蹴り上げて、蛇の主の元へと飛び出す。

「いい加減に――!」

 すでに奈緒の両腕は虎の爪が備わっていた。
 湧き上がる粉塵の中から、顎を使役する主、おそらくあの『カース』を討滅せんと両腕を渾身の力で振りぬこうと力をためる。
 粉塵の中に浮かび上がる目標の影、目標を捉えた奈緒は加速し続ける自らの体の勢いのまま一撃での両断を試みる。

『……ミナイデ、アタシヲ……ミナイデ』

 だが奈緒の意識はその容姿を視認してしまった時点で静止した。
 その姿は、ひどく痩せ細り、瞳は濁り焦点は定まっていない。
 漆黒の髪はその容姿とは対極的に黒々としているが、それは決して健康的な黒ではなく黒色の原色で塗装されたような光の反射さえ許さないような無機質の黒。
 そしてその髪は感情の振れ幅に呼応するように蠢き、そしてその末端は先ほどまで追い立てられていた蛇の顎と化している。
 黒いドレスのような、ぼろきれのような幕を身にまとった、奈緒よりも頭一つ以上小さい少女がそこにはあった。

 奈緒がその少女と目が合った時に、忘れていたことを思い出した。
 あの『カース』は自分であるということを、そして今眼前にいる少女の姿が、『記憶の底の、鏡の中の自分自身』によく似ていることを。



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