モバP「世界中にヒーローと侵略者が現れた世界で」part13
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279: ◆EBFgUqOyPQ[saga sage]
2016/10/18(火) 02:00:32.51 ID:nZ3oq+wSo

 『カース』は町に響くような叫び声を上げた後に、壁に向かって沿って吹っ飛んでいく。
 同盟本部のロビーにいた人々は捕まった人々を除けばすでにほとんど避難が完了していたため、その先には巻き込まれるような人はいない。
 『カース』の巨体は、その体に電気を纏ったまま巨大な大理石の壁に激突し、本部全体に衝撃を与えた。

『グ、アア……イタイ、イタイ、ヨ』

 想定外の方向から手痛い一撃を受けた『カース』はその巨体に似合わない高い悲痛なうめき声をあげながら崩落した大理石のがれきから立ち上がる。
 全身が泥のために火傷のように傷が焦げ付くことはないが、電撃によって体を構成していた泥の一部が蒸発し、湯気と共に汚水のような悪臭が周囲に立ち込めている。

「おなかすいちゃったのは、仕方ないかもしれないけどぉ」

 『カース』のすぐそばで聞こえる一つの声。
 逃げ遅れた人がいるのかと思った『カース』は、この消耗した状況にとっては渡りに船であった。
 依然空腹は一切満たされず、掻き毟るように湧き上がる飢餓感は絶え間ない泥の形成を促す。

 そもそもカースは感情のエネルギーの塊である。
 そしてその上で、カースドヒューマンが強力な理由として最も上げられるのはある程度自前で感情のエネルギーを供給できることであり、逆説的に周囲の感情エネルギーを力に変えることができることである。

 永久機関にも似たその性質は負のスパイラルであり、決して救いなどない。
 だがこの状況でこの『カース』が目の前につるされた餌にあり付くだけの活動能力を取り戻すには、湧き上がる飢餓感というエネルギーは最適だった。

『スイタ……スイタノ……タベ、タベサシテエエエエエ!』

 『カース』の自らの膨れ上がった巨体は、沸き立ちながらさらに変化を起こす。
 四足獣の姿からは大きくは変わらないが、さらに追加で1対の巨大な腕が床をつかむように形成される。
 さらにその獣の大口は可動域を無視すように大きく開き、その中は牙というには不揃いで、圧倒的に過剰すぎる剣山のような鋭利で黒い牙を一面に生やしていた。

「だけどぉ、みんなを怖がらせるようなことはダメだ、にぃ!」



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