174: ◆/D3JAdPz6s[saga]
2017/03/28(火) 00:29:12.31 ID:n9gHiMCwO
アロエは、ちらりと部屋の隅に視線を送る。
ミュウツー『……』
黙々と知識を貪っているはずの『ひとりめの生徒』が、こちらを静かに窺っていた。
妙に年季の入ったシーツの切れ目が、アロエの方に暗く開いている。
洗っていないのだろうなあ、などと呑気にアロエは思う。
ページをめくる手を止め、顔もこちらに向けて、じっと見守っている。
自分の連れてきた連中が粗相をしないか、心配なのだろう。
視線に気づき、シーツが落ち着きなく揺れた。
本人は大真面目なのだろうが、その慌てた動きは少し笑いを誘う。
アロエを見上げていたジュプトルが、遠慮がちに身をよじった。
アロエ「なあに?」
絵本の頭の方を自分の爪で指差しながら、枝の軋むような鳴き声を出した。
どうやらこれは、もう一度読め、という催促らしい。
アロエ「えー、もう一回? また同じやつでいいの?」
笑いながらアロエが尋ねると、ジュプトルは満足そうに頷いてみせた。
予想以上にコミュニケーションが取れることに、アロエはすっかり麻痺していた。
今にも、アロエにもわかる言葉で返事をしてきそうだ。
知能の面では、不可能でないような気がする。
もっとも、本当に人間の言葉を操るとは思えないが。
アロエ「もう三回は読んでる気がするんだけどねー」
アロエ「まあ、いいか」
ジュプトルはアロエの色よい返事に喜んだ。
脚をばたばた揺らし、嬉しそうに何か言っている。
残念ながら、アロエには何を言っているのかわからない。
明確に内容を伴ったものであることは、さすがにわかるのだが。
紙を破く音に似ている、と頭の片隅で思う。
469Res/395.47 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20