175: ◆/D3JAdPz6s[saga]
2017/03/28(火) 00:32:04.70 ID:n9gHiMCwO
離れたところにいる『ひとりめの生徒』が、ぷいと顔を横に向けた。
ミュウツー『……悪かったな』
頭の中に、不満そうな声が響く。
どうやら今の声は、さきほどのジュプトルへの返事らしい。
この子は何を言ったのだろう。
自分の膝を見ると、小柄なジュプトルはまた笑っている。
アロエは仕方なく、拗ねた方に問いかけることにした。
アロエ「なんて言ったの?」
ミュウツー『お前の方が読むのが上手いと言っている』
ジュプトルがまた笑う。
内容の他愛なさに少し安堵して、アロエは吹き出した。
アロエ「あはは、そりゃあ年季が違うよ」
アロエ「それにキミと違って、あたしはテレパシーじゃあないからね」
アロエ「鼓膜を通すかどうか、ってのも、違うのかもしれない」
ミュウツー『……そうか』
ミュウツー『やはり違うのか』
どうして上手くいかないのか、と言わんばかりに首を傾げる。
珍しく、年相応の――といっても年齢は知らないが――反応を見たように思った。
やけに少ない言葉に、隠しきれない悔しさや無力感が滲んでいる。
アロエは憐れに思う反面、微笑ましく思う。
その心境になれないのなら、成長は難しいからだ。
その点において、人間もポケモンも違いはあるまい。
そう思いながらアロエは、書斎の別の片隅に視線を移した。
絨毯にピクニックシートとタオルを敷いただけの床。
手元が暗くならないよう照らされた一角に、人間によく似た小柄な誰かが座り込んでいる。
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