176: ◆/D3JAdPz6s[saga]
2017/03/28(火) 00:33:44.88 ID:n9gHiMCwO
無論よく見れば人間ではなく、薄汚れたダゲキが腰を下ろしているのだった。
小児向けの文字の本と首っ引きで、一心に画用紙に向かっている。
その斜め前には、巨体を必死に縮めクレヨンを握るヨノワールが蹲っている。
自身も画用紙と戦いながら、ときおりダゲキの手元を覗き込んでいた。
ふたりがなにを描いているのか、ここからでは見えない。
ヨノワールが自分の巨体を捌きかねている姿が、妙に面白い。
アロエ「ま、じゃあ、もう一回だけ読もっか」
アロエ「そしたらアタシは休憩で、キミたちはおやつ」
アロエ「それでいい?」
ジュプトルが大きく、どちらかといえばおおげさに頷いた。
そして動作を終えたあとの一瞬、こっそりと肩を落とす。
アロエはそのわずかな動きを目敏く見つけた。
やはり、無理に明るく振る舞っているのだろうか。
ひょっとすると、と思う。
ここまでの大げさな挙動も、こちらに対する気遣いの一種だったのかもしれない。
そう考えると、この細い背中が痛々しいものに思えてならなかった。
アロエ(たしかに、ちょっと『浮き沈みは激しい』かな)
アロエ(今のところは、ただそれだけに見えるけど)
アロエは、ジュプトルの頭に何気なく手を載せる。
手が触れた瞬間、ジュプトルはびくっと全身を強張らせた。
撫でようとしただけで、アロエに他意はない。
「ギッ」と小さく、だが鋭い声で呻いた。
アロエ「あっ……、ごめん」
慌てて手をどける。
ジュプトルはぎょっとするほど身体を硬く縮めている。
まるで親に叩かれる直前の子供だ。
アロエは思わず息を呑み、その貧弱な背中を眺めた。
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