143: ◆/D3JAdPz6s[saga]
2016/10/24(月) 23:37:42.68 ID:GKUQ56mXo
噛み締めた歯の間から絞り出したような声だった。
本当は答えたくなかったのか、ダゲキは俯いたままだ。
ダゲキ「……ねえ」
ミュウツー『うん?』
ダゲキ「はやく いこう」
ミュウツー『あ……ああ、そうだな』
今度は明確に促され、ミュウツーもついに足を動かした。
隠れて溜め息をつきながら、少し意外なくらいの心持ちでダゲキの背中を眺める。
彼の不自然な呼吸が耳障りでしかたない。
ひょっとして、彼も今のやりとりで苛立っているのだろうか。
後方では、イーブイがまだこちらを見ている。
だが間もなく、残念そうに耳を垂らして踵を返した。
賢明な判断だとミュウツーは思う。
おそらくあのまま待っても、もう誰かが口を開くことはないだろう。
去ってくイーブイの後ろ姿に、よく似た別の足音が追従していった。
背後にいた誰かも一緒に歩いていった、ということのようだ。
暗くてほとんど姿は見えないが、ぼんやりした黒い影は見えた。
ミュウツー(……あれが新しく『拾われた』奴か)
ミュウツー(少し前だったと思うが、まだあまり顔を見たことはないな)
前を向く。
ジュプトルが『しゅっ』と細く唸り、ダゲキを見下ろしていた。
いつの間にか、ヨノワールの不安定な肩に再びよじ登っている。
ちゃっかりしたものだ、とミュウツーは内心で舌を巻いた。
ジュプトル「だいじょぶ?」
労るような、ジュプトルにしては優しい口調だ。
眉間に皺を寄せているが、気遣うように彼に視線を送っている。
469Res/395.47 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20