勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」後編
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673: ◆QKyDtVSKJoDf[saga]
2017/11/03(金) 18:23:09.91 ID:uAQKxthS0
『第六の町』の西に位置する大森林。その奥深くに存在する『エルフの里』。
エルフの里も、この三十年で大きく変わりつつあった。
魔王との決戦の際の共闘がきっかけで、人間との共存の道を探ろうという気運が高まったのだ。
このエルフの歴史の大きな転換点を迎えて、エルフの長老は長の座から身を引き、年若いエルフの少女が新たな族長となった。
新たな族長となったエルフの少女が元々人間に対してかなり好意的であったことも手伝って、エルフと人間の交流は進み、エルフの里の存在は公になりつつあった。
エルフ少女「ああ〜もう! 人間滅ぼしちゃおっかなぁーー!!!!」
エルフ少年「うわぁ!! いきなり何言ってんだ姉ちゃん!!」
椅子の背もたれに思いっきり背を預けながら両手両足を伸ばし、新たな族長、『エルフ少女』は叫んだ。
族長補佐という立ち位置についたその弟、『エルフ少年』はその突飛な発言にただただ目を丸くするばかりである。
エルフ少女「…………ダメか〜。二十年くらい前まではこれ言うと目の前に飛んできてくれたけどな〜。もう相手にしてもらえなくなったか〜」
エルフ少年「そりゃおんなじ手口を何年も使ってりゃあそうなるよ。ってか、姉ちゃんそのうちマジで裁かれるぞ。あの手この手で勇者様を呼ぼうとして……」
エルフ少女「だぁって彼ったら全っ然こっちに顔出さないんだもん。こっちから行こうにも居場所全くわからないし……ここまで世界開拓が進んだこのご時世で、未だに影も形も掴めないなんて信じられる?」
エルフ少年「簡単に手が届く場所に居ちゃ、威厳が損なわれる。そう考えてのことじゃないかな。もっともあの人の場合は、どこにでも現れすぎて逆にどこにいるのか分からなくなっちまってるパターンだと思うけど」
エルフ少女「……ほんとに、どうしてそこまで自分を犠牲にしちゃえるんだろうね。ずっと一人で、孤独に役割に徹して……馬鹿だよねえ、ホント」
エルフ少年「……姉ちゃん」
エルフ少女「いくらエルフが人間より長生きだって言ったって私の寿命は精々あと150年程度……永遠を生きる彼には到底寄り添うことは出来ない。ならばせめて、私は私に出来ることで彼の手伝いを―――なんて、柄でもない族長なんて立場を引き受けちゃったけどさ」
エルフ少年「……正直、ちょっと意外」
エルフ少女「何がよ?」
エルフ少年「勇者様のこと、結構本気だったんだな、姉ちゃん」
エルフ少女「好きでもない男に肌を晒すほど、私は軽薄な女じゃないよ」
エルフ少年「今明かされる衝撃の事実……姉は勇者様に裸を見せていた……いや、それを何で今更弟に言うんだよ……リアクション困るよ……」
エルフ少女「結局あれからいい男も見つからずに三十年間も独り身のまま!! あ〜あ、族長なんて辞めて婚活の旅に出ようかな〜」
エルフ少年「焦るなよ。俺だってまだ独り身だ。今みたいにエルフの発展の為に頑張っていれば、きっとこの先いい出会いもある」
エルフ少女「う〜ん……今から10歳くらいの杜氏の子を探して手をつけちゃおうかしらん」
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