勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」後編
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674: ◆QKyDtVSKJoDf[saga]
2017/11/03(金) 18:24:06.04 ID:uAQKxthS0
「長、ご報告が」
固い声が部屋の中に響いた途端、それまでの弛緩した空気は一気に打ち切られた。
報告を聞いたエルフ少女とエルフ少年の二人は、真剣な面持ちのまま視線を交わらせた。
エルフ少年「……今年に入ってもう五回目だ。人間たちが取り決め以上の量の木々を伐採している」
エルフ少女「……若い衆を何人か集めて、現地に向かわせて。出来るだけ口が達者な者がいい」
エルフ少年「腕の立つもの、じゃなくてか?」
エルフ少女「武力による排斥は絶対に禁止だ。それをすれば、現在狩りのためとして最低限所有を認められている武具すら取り上げられる可能性がある。それだけならまだしも、私たちエルフそのものが粛清の対象になる可能性だって……」
エルフ少年「――――絶対中立の制裁装置、か。やれやれ……俺も現地に行くよ」
エルフ少女「ごめんね。お願い」
エルフ少年「人間は、数を増やして、ただでさえ薄かった精霊信仰の意識がますます希薄になってきてる。そこあたり、俺たちの言葉が伝わってくれればいいんだけどな……中立の神様にも」
エルフ少女「………」
エルフ少年が立ち去り、一人になった部屋でエルフ少女はひとつ大きく息を吐いた。
エルフ少女「いや〜、平和ってのも大変だね、こりゃ。最近は竜神ちゃんとこのアマゾネスも色々大変だって聞くし……」
いつもの明るい調子ではなく、ほんの少し疲れを滲ませた笑みをエルフ少女は浮かべる。
エルフ少女「人間なんて滅ぼしちゃおっかな……なんて、私が本気で口にしたとき、果たして君は――――」
ぶんぶんと、エルフ少女は大きく頭を振った。
ぱん、と両手で頬を叩いてエルフ少女はニカッと笑う。
エルフ少女「ま、君も頑張ってるんだ。私だって、やれる限り頑張らなきゃだ!」
殊更に明るい声で、自分を鼓舞するようにエルフ少女は言った。
どこか遠くで、どことも知れないところに落ちる雷の音が聞こえた。
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