勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」後編
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563:名無しNIPPER[saga]
2017/06/25(日) 16:19:27.20 ID:dyU/3Fo20
 パチパチと、火の手が家屋を燃やす音がする。

魔族娘「痛い……痛いよ……ママ…どこ……?」

 衝撃に家ごと吹き飛ばされた魔族の娘は、痛む体を引きずって瓦礫の隙間から這い出した。
 烈光をまともに直視してしまった彼女は既に視力を失ってしまっている。
 だから、彼女はすぐ傍で物言わぬ肉塊となっている母の姿に気付けない。
 暗闇の世界を、母を求めて彼女はただひたすらに手探りで進んでいく。

「ぎゃあ!!」

 遠くで悲鳴が聞こえた。
 びくり、と彼女は肩を震わせる。

「やめ、たすけ…あぁぁ!!!!」

 すぐ近くで悲鳴が聞こえた。

魔族娘「なに…? なんなの…?」

 目は見えなくなってしまったけれど、皮膚に伝わる熱が燃え盛る街並みを彼女に想像させる。
 轟々と燃える炎の音の中で、小さくサクリと草を踏む音が聞こえた。

魔族娘「誰…?」

 返答は無かった。
 そしてそれが彼女の最後の言葉になった。




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