勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」後編
↓ 1- 覧 板 20
279:名無しNIPPER[sage saga]
2016/06/26(日) 19:27:49.57 ID:Trw4ei5x0
バヂィィィィン!! と凄まじい音が響く。
もんどりうって背中から倒れた勇者の襟首を、戦士は掴み上げた。
戦士「ふざけるな……ふざけるな、ふざけるな、ふざけるな!!!!」
勇者「いってぇな……何すんだよ」
戦士「『伝説の勇者の息子』であること以外に価値がない? ふざけるな! 忘れたのか!?」
戦士「武道家も、僧侶も、そして私も!! お前についてきたのはお前が『伝説の勇者の息子』だからじゃない!! お前が、お前自身が、信頼に足る奴だったからだ!! お前と一緒に旅をしたいと、そう思わせる奴だったからだ!!」
戦士「そうやって、ちゃんと言ったじゃないか!! ちゃんと伝えたじゃないか!! なのに、何でまたそういう風に言うんだ!!」
勇者「うるせええええええええええええええ!!!!!! お前に何がわかる!! 俺は、俺の人生を『伝説の勇者の息子』としてだけ生きてきた!! そう強制されて、俺もそれを飲み込んで生きてきた!!」
勇者「そうだ、俺は俺として、ただの自分として物事を決めたことがない!! 『伝説の勇者の息子という被り物』を口では否定しながら、その実俺自身が何よりもそれを頼りにして生きてきたんだ!!」
勇者「なんて情けない奴……!! その結果が、このザマだ!! 自分の人生を自分自身に依らなかったことのツケ……!! 寄る辺が無くなって、もう訳が分からなくなっちまってる。どうしたらいいのか分からなくなっちまってる!!」
勇者「だから、もういいんだ……俺は、最後まで、たとえハリボテだって分かってしまっても、『伝説の勇者の息子』としての在り方に縋って、そして、死ぬ。もう、それでいいんだ……いいんだよ、もう………」
ぼろぼろと、勇者の目から涙が零れる。
ひっく、ひっくと嗚咽が漏れる。
戦士は――――そんな勇者の頭を優しくその胸に掻き抱いた。
戦士「違う……勇者、それは違うよ。お前は、ちゃんとお前自身として旅をし、物事を感じ、生きていた」
758Res/394.23 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20