勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」後編
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278:名無しNIPPER[sage saga]
2016/06/26(日) 19:26:40.68 ID:Trw4ei5x0
戦士「勇者ッ!?」

勇者「何を驚く? 俺は何か間違ったことを言っているか? 『伝説の勇者の息子』としてやるべきことは、もうこれしかないだろう」

勇者「ああ、もちろんついてこいなんて言わないさ。むしろついてこなくていい。戦士にはそんな責務は無いんだからな」

戦士「本気で言っているのか!?」

勇者「本気だよ。むしろ戦士がどうしてそんなに驚いているのか、理解に苦しむね。君が求めた『伝説の勇者の息子』の在り方として、これは真っ当な行動だろう」

戦士「………ッ!!」

 戦士の顔が赤く染まった。
 何かに耐えるようにぐっと唇を引き結んでから、戦士は絞り出すように声を出す。

戦士「………大魔王に挑んで勝てると、本当にそう思っているのか?」

勇者「勝てるかどうかなんてどうでもいい。大魔王に挑まないなんて選択肢は『伝説の勇者の息子』には存在しない」

戦士「………それじゃ、死にに行くと言っているようなものじゃないか」

勇者「そうかな? そうかもな。どうだろう? でもどっちでも良くないか? どっちでもいいだろ。生きようが、死のうが、こんな俺なんか」

勇者「『伝説の勇者の息子』ってだけが俺の価値だった。でも『伝説の勇者』にそんな価値なんて無かった。なら俺も無価値だ。価値のない命だ。ならばせめて有意義に消費するべきだ。そうだろ?」

 ふるふると、戦士の握りしめた拳が震えていた。
 やがて、戦士は涙に濡れた目でキッ、と勇者を睨み付け―――その頬に、強烈な平手打ちを見舞った。




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