女神
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220:名無しNIPPER[saga]
2016/05/04(水) 21:09:36.85 ID:mt1lqNZYo

 翌朝、僕は遅刻ぎりぎりの時間に目を覚ました。全身にじっとりと嫌な汗をかいていた。
何でこんな夢を見たのだろう。それは、優と一番距離が縮まった時の甘美な記憶だった。
そして次のシーンは、麻衣が背伸びして僕の頬にキスしてくれた昨晩の記憶だ。

 かつて付き合っていた優の、まるでAV女優のような姿を見て気が弱くなってるんだろ
う。僕は自分の見た夢について考えるのを止めて階下に下りた。遅刻寸前だから朝食は省
略でいいけど、出社する前の父親を掴まえなければならなかった。

 ・・・・・・僕が家を飛び出した時、僕のバッグはいつもより重かった。その中には父から
借りたモバイルノートとモバイルルータが入っていたからだ。

 その日の放課後、僕は生徒会室に顔を出した。時間が早すぎたせいで室内には副会長と
遠山さんが何やら雑談しているだけで、他に役員の姿は見当たらなかった。二人の会話を
邪魔することに少し気が引けたけど、僕は急いでいたので副会長に話しかけ、必要な指示
を彼女に伝えた。それだけ済ませて僕が部屋を出ようとすると副会長はあからさまに不服
そうな顔をした。そして僕に向かって何かを話そうとしたけど遠山さんのことを気にした
のか、結局彼女は何も言わなかった。

 そのことにほっとして僕が生徒会室を出ようとした時だった。それまで黙って僕と副会
長のやりとりを聞いていた遠山さんが口を開いた。

「あの、先輩」

 それは副会長ではなく僕にかけられた言葉だった。

「うん。どうしたの」

「先輩、最近生徒会にいないでパソコン部の方にばっかりかかりきりになってますけ
ど・・・・・・ひょっとしてあたしのせいですか」

 遠山さんは思い詰めたような表情で言った。

「君のせいって・・・・・・何でそうなるの。こんな時期だけどパソ部に新入部員が入ってきた
から指導しないといけないだけだよ」

 僕はどぎまぎして答えた。いったい遠山さんは急に何を言い出したんだろう。しかも副
会長が聞いているところで。

「でも先輩、あのことがあってから学祭の準備に加わらないし、あたしのことも避けてる
みたいだし」

「だからそうじゃないって」

「あの・・・・・・生徒会には先輩は必要な人ですし、先輩が気になるならあたしが役員を辞め
てもいいかなって。先輩の態度が変になっているのはあたしの責任だし」

 何を言っているのだ。この上から目線の勘違い女は。僕はその時彼女を憎んだ。彼女は、
僕が自分に振られたために、彼女を避けて卑屈な行動を取っているのだと断定し、それな
ら僕を振った自分が身を引きますというご立派なことを提案しているのだった。

 僕をコケにするのもいい加減にしろ。

 僕はこの時遠山さんをというより、遠山さんや広橋君に代表されるような、他者から好
意を持たれて当然と考えている類いの人種に激しい憎悪を抱いた。遠山さんは自分が僕に
とって高嶺の花だということを前提に、その高嶺の花である彼女は僕のようなゴミと付き
合えるわけはないけど、それでもそのことによって僕を傷つけたことをすまないと思って
いるということを言っているのだった。

 それは、自分は優しい女だから例え自分にとってゴミクズのような男を振ったとしても、
そのことに対してきちんと罪悪感を感じられる優しさを持っているのだとアピールしてい
るのと同じだった。


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