193:名無しNIPPER[saga]
2016/04/17(日) 22:57:37.82 ID:GO5crQa4o
そのうち、ひそかに危惧していたとおり、僕が遠山さんに告白して、彼女がそれを断っ
たという噂が生徒会内に流れ始めた。それは噂ではなく事実だったのだけど、僕は本気で
遠山さんが好きになったわけではない。でもその噂はその部分は抜きで、本気で僕が彼女
を好きになり告白して、そして振られたということになっていた。僕は噂をやはり副会長
から聞かされたのだった。
「遠山さんがあんたのことを好きなんじゃなくて、逆だったか」
副会長は遠慮会釈なく僕に言った。「遠山さんって、あんたのことが好きだから最近あ
んたに接近してるんじゃなくて、振ったことが後ろめたくてあんたにも気を遣って欲しく
なくて、今まで以上にあんたと接するようにしてたのね」
僕は反論しようとしたけど、何といっていいのかわからなかった。
「元気だしなよ。そもそも遠山さんには広橋君がいるってあたしが教えてあげたのに、あ
んたはだめもとで告ったんでしょ」
僕が遠山さんに告白した場所には誰もいなかったはずだ。それを知っているのは僕と遠
山さんだけなのだ。そして、遠山さんは僕に告白されそれを断ったことを自慢げに周囲に
話すような子ではなかった。いったい誰がこんな話を広めているのだろう。僕は必死に考
えたけど、そんなことをする人間のことは思いつかなかった。
僕はもう副会長に返事をする気すらなくしていた。それから、僕は生徒会では遠山さん
を避けるようになった。そんな僕に彼女は戸惑っていたようだけど、周りの役員たちはや
っぱりねという視線で僕を見ているようだった。
やがて僕のプライドは、僕を気遣うような、そして僕をからかうような役員たちの視線に
耐えられなくなっていった。
生徒会に居辛くなった僕は、会長としての最低限の仕事を済ますと、僕が部長を務めて
いるパソコン部で時間を過ごすようになった。ここは気楽な場所だった。僕は部長だった
けど、ここの部員を組織として動かすとかみんなで一丸となって何かをやり遂げようなん
て無駄なことを考えたことは一度もなかった。
この部は極度な個人主義的な雰囲気が特徴であり、部員たちはデスクトップPCの前で
思い思いに勝手なことをして放課後の時間を過ごしていた。まるでネカフェのようだった
けど、それがパソ部の部活の実態だったのだ。一応僕はこの部の部長なのだけど、ここに
逃げ込むとそういうことは別にどうでもいいやと感じられるような雰囲気の場所なのだっ
た。
ある日、生徒会のミーティングで戸惑っているような遠山さんや、からかい混じりの役
員たちに最低限の指示を与えた後、僕は逃げるようにパソ部の部室に来た。いつもは静か
にPCの前で好き勝手なことをしている部員たちが、どういうわけか困惑したように一人
の女の子を囲んで何やら話し合っている姿が僕の目に入った。
「どうしたの」
僕は誰にともなく声をかけた。何で男だらけのこの部室の真ん中に、こんな部に似合わな
い一年生らしき女の子が目を伏せて座っているのだろう。
「ああ部長。ちょうどよかったです」
二年生の副部長が心底助かったという表情で言った。「彼女、入部希望者なんですけど」
それで、こいつらは困惑した様子だったのか。僕は少しだけおかしかった。僕はイケメ
ンでもリア充でもないけれど、こいつらのように女の子が部室に来たというだけでこれほ
ど面食らってどうしたらいいのかわからなくなるということはない。僕はその女の子を見
た。
それではこの女の子はパソ部に入りたいといういうのだろうか。個人的にアドバイスす
るならば止めておいた方がいいよといいたところだけど、部長としてはそうもいかなかっ
た。
「僕が部長なんだけど、君はパソコン部に入部希望なの?」
よく見ると、その子はすごく可愛らしい子だった。優とか遠山さんのように、きれい
で可愛らしいけど、実は意志が強いという感じはせず、か弱く守ってあげたいという外見
の少女だった。徽章を見ると一年生だ。
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