女神
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192:名無しNIPPER[saga]
2016/04/17(日) 22:56:07.72 ID:GO5crQa4o

 やはり同姓同名の他人ではなかったのだ。僕は胸を痛めた。彼女にとっては僕なんて過
去の思い出に過ぎないのだろう。だから、同じ学校に入学してもそのことを僕に知らせる
気にすらならなかったのだ。それは僕にとっては厳しい発見だった。ある意味、優が黙っ
て転校したことより厳しかった。

 あの時は、僕たちは家庭の事情というやつに振り回された悲劇のカップルだと思い込む
ことが出来た。彼女が黙って転校して行ったのも、僕に話したとしてもどうにもならなか
ったのだからだと。

 でも、こうして同じ学校に入学したことを、優が僕に話そうという発想がない時点で、
僕と優に起こった出来事は僕が思い込んでいるようなロマンティックな悲劇などではなく、
単に彼女が僕のことなんか気にしていなかったということになる。それも、おそらく彼女
が転校した時から。いや、もしかしたら僕と付き合っていたときから。

 僕の告白に応えなかった遠山さんだけど、その後の生徒会活動には普通に顔を出してく
れていた。学園祭が近かったので、今では主戦力となっている彼女が僕のことを気にして
生徒会や実行委員会に顔を出しづらくなったらどうしようと思ったのだけど、責任感が強
いせいか彼女は普通に活動に参加してくれていた。

 ただ、僕が堪えたのは遠山さんがやたらに僕のことを気にするような行動を取るように
なったことだった。僕を振ったことを気にしていたのだろうか。彼女は告白を機に僕とよ
そよそしくなるより、今まで以上に僕に親しく話しかけることによって、僕の告白は気に
してませんよ、今までどおりいい先輩後輩でいましょうと訴えているようだった。

 でも、そんな彼女の行動はかえって生徒会役員たちの好奇心を刺激してしまった。

「石井会長と遠山さん、最近妙に仲良くない?」

「遠山さんって本当は石井会長狙いだったのかな」

 そんな噂が流れているよと僕に教えてくれたのは、副会長だった。

「ばかばかしい」
 僕は切り捨てた。「だいたい遠山さんには、広橋君だか池山君だかがいるんだろ」

「でも最近の彼女、妙にあんたに話しかけたりあんたのそばに擦り寄ったりしてるからなあ」

副会長は例によってこの手の話題が大好物のようだった。

「あんたのこと、実は好きだったりして」

 そんなことはないことは僕が一番よく知っていた。そしてこの噂を鎮めるには、僕が遠
山さんに告白し振られたという事実を明かせばそれで澄むことだった。でも、二見さんの
彼氏を知ろうとして仕掛けた告白とはいえ、そんな事情まで話すわけにいかないから、そ
れだと世間に出回る事実は僕が遠山さんに振られたということだけになる。それは、プラ
イドだけは無駄に高い僕には耐えられなかった。

 なので、無念ながらこの噂は放置するしかなかったのだけど、その後も遠山さんは僕に
気を遣うあまり、今までより僕に近づき僕に優しく接することをやめなかった。それは僕
の精神状態に微妙な影響を与え始めた。僕はあくまで作戦の一環として遠山さんに告白す
る振りをしただけなのだけど、彼女が僕をこれ以上傷つけまいと、告白前と変わりないと
いうか告白前より親密に接してくれるようになると、僕は何だか本当に彼女に振られたよう
な気分になってきた。

 ただでさえ、優の僕に対する本心を知った後なのに、遠山さんに本気で恋して、そして
振られた気になっていった僕は、だんだんといつもの冷静さを失うようになっていった。


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