240: ◆6QfWz14LJM[saga]
2016/01/29(金) 02:21:33.89 ID:mI3mcWABo
「……よくわかってるじゃない」
冷徹な声を発した彼女は、腰を上げ、私の方に向き直る。
天井の電灯が逆光となり、依然としてその喜怒哀楽は判然としない。
「ねぇ先輩……私が今日のこの時まで、あなたと一緒にいてもあの子を思い出さなかったのは、何でだと思う?」
それが無責任に答えられる問いでないことは、明らかだった。
己を見失っている私には、応えようもない。
それを見越していたのか、エリナはすぐに語りを継続させた。
「……初めて顔を合わせた時のあなたは、全然違う顔つきだったから」
「勝手に押しかけてきた私を受け入れて、問題に向き合ってくれて……!」
平静を保っていたエリナの声が一瞬、揺らぐ。
「私と一緒にいる時の先輩は、あんな顔しなかった」
「あなたの実力を目当てに近づいたのは確かよ……でも、立場に関係なく面倒を見てくれた先輩だから、この人についていこうって思えたの」
「……それが何?自分の事になると、たった一回の失敗で訳わかんない事言い出してさ……!」
膨れ上がった怒気に呼応するかのように、戦慄く拳。
それは、今にも溢れ出してしまいそうな、何かを抑えているようにも見えて。
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