223: ◆c4YEJo22yk[sage saga]
2016/03/27(日) 20:27:38.24 ID:qZYUd6et0
「この本には関節技もたくさん載ってるんですよ」
「へえ、何となく知ってる技もあるなあ」
俺は本のページをぱらぱらとめくりながらつぶやく。
「プロデューサーさんって格闘技に詳しいんですか?」
「いいや、全く。のり子と話してて聞き覚えがあるってだけだよ」
福田のり子はシアターメンバーの一人で、格闘技観戦が趣味だ。
よく「足関節はリスキーだよね〜」などと語っているのだが、俺にはよく意味がわからない。
「うーん、どの技から練習したらいいんでしょうか……。難解なものが多いんですね」
「それじゃあ、これなんてどうだ?」
百合子が迷っているようだったので、俺はページの片隅を指差した。
そこには『十字固め』が図解付きで載っていた。
彼女は少しの間その図を眺めてから、納得したように頷く。
「他の技よりは簡単そうですね。やってみます!」
十字固めは、相手の腕を自分の両脚で挟んだ状態から引っ張る技だ。
実際の格闘技の試合でも決まり手になることが多いらしい。
「じゃあ、そこに横になってください。プロデューサーさん」
「おう」
百合子に促されて、俺は床のカーペットの上に仰向けになる。
「では、失礼しますっ」
そう言うと百合子は、俺の右腕を自分の太ももに挟み、手首を掴んだ。
彼女の肌の柔らかさと体温が伝わってきて、思わずどきりとする。
「引っ張りますよー? 痛くないですか?」
「うん、気持ちいい……じゃなかった。全然痛くないな」
俺の腕はぐいぐい引っ張られているのだが、関節が極まる気配はない。
それよりも、手の甲が百合子の胸の辺りに当たるのが非常に気になる。
その感触に思わず頬をにやけさせている時だった。
「おはようございまーすっ!」
元気な挨拶とともに扉が開き、誰かが部屋に入ってきた。
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