7: ◆yyODYISLaQDh[sage saga]
2014/11/25(火) 20:36:02.12 ID:tQslcSvIO
雨の眼光に貫かれ(前髪で見えないが)、光は身体を竦ませる。
電波な姉とは違ってしっかり者の妹だが、何かと雨には頭が上がらないらしい。
雨は、ジュウに対する言葉よりも幾分か柔らかく、言い含めるように喋り出す。
「言いがかりはダメよ、光ちゃん。今日は大雨になるから、補習は無くなったの」
「えっ」
「それに、まずは挨拶でしょう?」
ジュウを攻撃する明確な理由が消え、姉に諭された光は、しぶしぶといった様子で、唇を尖らせながら挨拶をしてくる。
「……こんにちは、柔沢、先輩」
「おう。久しぶりだな、光」
「き、気安く名前を呼ぶな、この女ったらし!」
さっきのやりとりが悔しかったのか、光は興奮に顔を赤くして再び罵声飛ばしてくる。
ジュウはそれを適当に躱しながら歩き出し、光が横から暴言を重ね、少し後ろを雨がついてくる。
何が楽しいのか、雨はジュウと光のやりとりを見て微笑み、ジュウと目が合うと、小首を傾げて見つめ返してくる。
対するジュウはなんだか気恥ずかしくなって目を逸らしてしまう。
数か月前の光雲高校の騒動以来、ジュウは雨に対して、これまでに無い気恥ずかしさを覚えていた。
ジュウはその騒動で死にかけた(とはいっても結局は擦り傷程度だった)のだが、その際になんだかんだあって、泣きじゃくる雨の頭を暫くなで続けることになったのだ。
しかも、公衆の面前で。
それ以来、普段通り接することもできるのだが、あの眼で見つめられると、どうにも参ってしまうのだ。
原因をジュウなりに考えてみたのだが、考えるほどにモヤモヤとした煙が頭に充満するだけで、意味はなかった。
……やめだ、こんなことを考えてもしようがない。
ジュウは頭を切り替えて、大人しく光の罵声を浴びることにした。
そうしているうちに、いつもの別れ道までやってきた。
ジュウは手を挙げて、いつも通り、じゃあな、と声をかけようとしたが、それよりも早く、雨がこんなことを言い出した。
「光ちゃん、ジュウ様に用があったんじゃないの?」
光はその言葉にギョッとした顔をすると、慌てて否定した。
「な、な、なななんであたしがこいつに!?」
「今日は補習があるはずだったから、光ちゃんがあの時間に学校に来るなんておかしいもの。だから、ジュウ様に用があるんだと思って。違う?」
なるほど、言われてみれば確かにそうだ、とジュウは思う。
光は、補習があることを知っていた。
それなのにあんな時間から校門で待ち構えていたのはおかしい。
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